【キム・ミンチョル記者】 会社員のチェ・キジュンさん(35)は少し前、夏休みの旅行に出掛
けようとしたが諦めた。生まれてすぐから祖母の元で育った5歳の一人息子が、祖母と離れて
両親と旅行に出掛けるのを嫌がったためだ。チェさんの母親は体が不自由なため、1週間の旅行
に出掛けるのは難しい状態だ。
「僕はおばあちゃんや保育園の友達と遊ぶ方がいいんだ。ママとパパは土曜日だけしか来ない
じゃないか」
チェさんは「プールに行こう。おもちゃも買ってあげる」となだめたが無駄だった。「子ども
を他人に預けるわけにいかず、妻も大田支社へ転勤となったため、仕方なく70歳を過ぎた母親
に子どもを預けたが、息子にとって父親と母親とは一体何なのか…胸が張り裂けそうだ」
韓国で育児が本格的な社会問題となり、乳幼児保育法を制定してから20年が過ぎた。これまで
保育施設は多少増加したが、今も育児に「苦痛」を感じている若い両親は多い。特に共働きの
夫婦が急増する中、育児は祖父母など家族全員を苦しめる問題となっている上、出産を避ける
傾向にもつながり、国家的な懸案として浮上している。
国公立保育施設であるソウル市江南区のS保育園。待機児童数が0歳児(満1歳未満の子ども)
1222人、1歳児933人など、7月2日現在で3266人。つまり0歳児の場合、待機番号が1222番まで
出ているわけだ。韓国は0歳児を保育施設に預ける割合が約28%と世界最高水準だ。
保育費が安く、教育条件がよりよい国公立保育園に入るのは、至難の業だ。ソウルの国公立保
育園は、待機児童数だけでも32万4000人以上に上る。そのため、最近の母親たちは妊娠を確認
すると、すぐに区立保育園への入園申請を行う。ソウル市麻浦区に住む妊娠6カ月のカンさん
(35)は「子どもがおなかの中にいるときから入園競争をしている」と話した。
韓国女性政策研究院が今年3月末、12歳以下の子どものいる共働き夫婦1500人を対象にアンケ
ート調査を行った結果、女性の77.9%、男性の53.6%が、家庭と仕事を両立する上で最も大きな
問題として「子どもの育児問題」を挙げた。韓国は他の国に比べ、勤労時間が長い半面、職場
で育児に配慮する雰囲気が不足している。
このような状況で、信頼して預けられる保育施設も不足しており、祖父母やベビーシッター、
保育園に子どもを預け、迎えに行くために、戦いの日々を送っている。
6歳と4歳の息子2人を育てながら共働きしているキムさん(41)=公務員=は「子どもたちが
寝た後、夜10時を過ぎてから帰宅する妻が『子どもの顔も見られないのに、ここまでして仕事
をしなくてはいけないのか』と泣くことがよくある」と話した。
朝鮮日報 2011/08/15
http://www.chosunonline.com/news/20110815000044 グラフ
http://file.chosunonline.com//article/2011/08/15/066385824144735839.jpg