中国人民解放軍の陳炳徳総参謀長がこのほど香港メディアに対し、中国初の空母について「建
造中だが、まだ完成していない」と述べた。中国の軍高官が空母建造を初めて認めたこの発言
を受けて、国内の各軍事系サイトは大興奮。「列強にいじめられた時代はこれで完全に歴史と
なった」「頑張れ!世界の新覇者」といった書き込みが殺到した。新空母と米軍の現役空母と
の比較や、空母の名前についての提案などがインターネットにあふれており、中国人の多くが
建設中の空母に高い期待を寄せていることがうかがえる。
保守系サイトの「軍事縦横」などに寄せられた書き込みの中に、「南シナ海や東シナ海の領土
問題で周辺国との対立が高まっているなか、中国は漁民と海洋権益を守るために、空母が絶対
に必要だ」と主張するものがある。昨年9月に沖縄尖閣諸島で起きた海上保安庁の巡視船と中国
漁船の衝突事件を意識した書き込みとみられる。
また、「湾岸戦争もイラク戦争も空母からの攻撃で始まった。空母がなければ近代戦争に参加
する資格すらない」として、空母建設の必要性を強調する意見もあった。「アメリカや日本は
第二次世界大戦の時にすでに空母を持っていたのに中国は70年も遅れた」とし、「もっと早く
建設すべきだった」との声もあった。
さらに、「中国の領海は広いので、南シナ海に二つ、東シナ海、黄海と渤海にそれぞれ一つ、
最低でも合計5つの空母戦闘群が必要だ」と指摘して、今後さらに複数の空母を建設する必要
性を強調する者もいる。
中国では現在、東北部の大連造船所でウクライナから購入した旧ソ連軍の空母「ワリャーグ」
の改修工事が継続されており、今秋までにも完成し、訓練用艦として導入されるとみられる。
一方、「ワリャーグ」の技術を参考にして上海造船所などで純国産の空母も建造中だとされて
いる。陳総参謀長の発言はどの空母を指しているのかは文面だけでは判断できないが、インター
ネットではほとんどの人は純中国国産の方だと理解している。「独自の技術を生かして、欧米
や日本が想像もできないような最先端空母を作ってほしい」と期待を膨らませている。
中国初の空母のため、その名前についてもネットで大きな話題となっている。台湾との統一が
いまだに実現できていないことを理由に、清朝初期に台湾を奪還した水軍の将軍「施琅」の名前
をつけようと意見が多かったが、「台湾を刺激して両岸関係にマイナスだ」との理由で反対も
多い。三国時代の赤壁の戦いで魏の曹操の大軍を破った呉の将軍「周瑜」や、中国建国の父
「毛沢東」の名前をつけるべきだとの主張も多い。尖閣諸島の中国名「釣魚島号」を空母の名前
にして、「領土を守る決心を日本に示そう」とする意見も少なくない。
こうした勇ましい書き込みがあふれる中、「今までの30年、空母はなくても中国は経済発展
ができたのではないか。軍備増強の必要性は考えられない」「空母建設よりも教育、福祉、環境
など税金を投入しなければならない分野はたくさんあるのに」といった冷静な声もあるが、こ
うした意見は極めて少数で、その下に「非国民!」「オバマの手先に違いない」といった批判
が多く寄せられる。
MSN産経ニュース 2011/06/12
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110612/chn11061218010002-n1.htm