日本でもさまざまな中国人コミュニティが増えてきて、中には人権問題や民主化問題に関する
勉強会などもある。私は特定のグループに関わってはいないが、結構知り合いがいる。
例えば中国人の友人Aさんがこう言うのだ。「Bさんは、信用できるんですか」。「え?」と聞き
返すと、「Bさんは、中国大使館からお金をもらっている、と言う人がいるのです」と。
またCさんは私にささやく。「Aさんとは、あまり付き合わない方がいいですよ。Aさんは中国の安全
当局とつながっているかもしれない」。で、別の場面で「Cさんは、なんか怪しい。反体制的な言動
を言っている一方で、中国で貿易の商売をしている。可能でしょうか?」とDさんが言う・・・。
■日本人同士で疑心暗鬼になるのが思うツボ
最近はそういう噂の対象が日本人にも広がってきており、Aさんは「昔は日本人は信用できる
と思っていたのですが、最近は中国政府のために働く日本人が増えてきて、気が許せない」と
ため息をつく。
私はとりあえず、こう言っておく。「そうやって誰それが怪しい、といって中国人同士、日本人
同士で疑心暗鬼になるのが、きっと中国当局の思うツボなんですよ。なぜなら中国当局にとって
一番嫌なのは、みんなが結束して体制に批判的な世論を作り上げることでしょうから」「“工作員”
でもいいじゃないですか。むしろ素知らぬふりで相手から情報を取るチャンスくらいに思えば
いいですよ」
しかし、そういう私もツイッター上で「赤子の手をひねるようにスパイなどに利用されるタイプ
だろう」といった中傷を見知らぬ人から受けたりしているので、知らないところで何かを言わ
れているかもしれない。
そんなふう中国人がすぐ「特務」や「間諜」を気にするのは、やはり中国ではそれほどに“ス
パイ”や“情報工作”、“ハニートラップ”が多いからだろう。最近も軍事機密をめぐるスパイ
小説のような話が明らかになっている。
■まるでジェームズ・ボンドの世界そのまま
今年1月に台湾国防部は「台湾陸軍司令部の羅賢哲少将を中国に軍事情報を長期にわたって漏洩
した容疑で逮捕した」と発表したが、この内幕が香港誌「前哨」5月号に掲載されていた。現役
少将がタイ駐在武官の任にあたっていた時にハニートラップにかかり、中国に台湾の軍事情報
を流していたとして、台湾を震撼させた事件である。
羅賢哲が中国側に米国から購入していたハイテク通信システムの情報を提供していたことを米国
に漏らしたのは、実は、中国国家安全部の前部長、許永躍の腹心の部下で、安全部弁公庁主任
も務めたこともある安全部の中枢人物、国家安全部香港マカオ局長の周国民だったというのだ。
米国側が台湾にこの事実を教えた。
周国民は安全部の有能な工作員で、羅賢哲を中国側に寝返らせたのも彼の功績だという。しか
し許永躍が愛人問題で失脚後は、香港マカオ局長に転勤させられていた。この時、米国情報局・
台湾軍事情報局の美人諜報員に籠落され、羅賢哲が中国側に情報提供していたことを漏らした
という。羅賢哲逮捕の発表をうけて、安全部側が、内部にダブルスパイがいると確信して調査
していた結果、判明した。周国民は安全部の核心にいた人物であり、これは1980年代以来の最大
のダブルスパイ事件という。
>>2,3に続きます
日経ビジネス 2011/05/18
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110517/220011/ 関連スレ
【米国】米議会が対中科学協力を禁止 スパイ行為を警戒[05/13]
http://kamome.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1305267103/ 【国内】なお暗躍する北スパイ わざわざ成田でバイト 貿易ルートで情報送信?[05/12]
http://kamome.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1305199471/ しょせん香港誌の暴露記事なので、どこまで信用できるかは読者にお任せするが、台湾の現役
少将をハニートラップに陥れた中国安全部員が米国CIAのハニートラップにひっかかるなど、
まるでジェームズ・ボンドの世界そのままである。
■外国人留学生を工作員としてリクルート
中国が大国化し米中関係が緊密化するに従い、中国の米国におけるスパイ活動は近年、特に活発
になってきているそうだ。2008年から現在に至るまで、中国側が米国の機密を得るために送り
こんでいた“スパイ”として連邦裁判所などに起訴されている被告は57人に上る。中国人だけ
でなく中国に留学経験がある素人の若者や普通の米国人技術者などさまざまだ。
たとえば、深セン馳創電子公司の社長・呉振州は軍事レーダー部品などを虚偽申請をして、香港
のダミー会社を通じて持ち出し、中国の軍事企業や軍事科学研究所に提供していたとしてボス
トンの裁判所で懲役97カ月の判決を受けた。
レーダーに捕捉されにくい巡航ミサイルに関する機密を中国軍事科学研究所に約11万ドル
(900万円)で売った罪で懲役32年の判決を受けた66歳のインド系米国人元技術者・ノシル・
ゴワディアは、ずっと善良な米国人技術者と思われていたが、彼の情報漏えいが中国のステルス
機開発に大いに役立ったと言われている。
米軍需製品メーカー・レイセオン製の国外持ち出し禁止の赤外線カメラを上海の企業に提供し
て実刑を受けた米国人青年は、なんの前科もなかった。
29歳の元上海留学生、グレン・シュライバーが、留学中に中国当局にスパイとしてリクルート
され7万ドルの報酬を受けて、CIAか米国外務省に入省し情報を提供するよう求められた事件は
禁固4年の判決が下された。シュライバーはCIAの最終面接まで残ったという。中国当局が一般
の外国人留学生を工作員としてリクルートした上で米国情報機関に送りこもうとしたこの事件
は未然に防がれたが、相手がCIAなどではなくて、中国が欲しがる技術や情報を持っている一
般企業やマスコミなどであれば、やすやすとスパイが送り込めたかもしれない。
いずれも今年に入ってから判決が出た事件だ。米国側はこういった状況を受けて、今年4月、
批准した予算法案で「NASA(米航空宇宙局)およびホワイトハウス科学技術政策事務局は中国
との協力によるあらゆる政策、計画、命令、契約を行うために連邦予算を使ってはならない」
中国および中国資本の企業との協力に干渉してはならない」といった条項を盛り込んでいる。
これに対して、中国社会科学院米国研究所の米国政治研究所主任の倪峯氏は環球時報のインタ
ビューに答えて「この種の米国の対中規定は初めてではない。連邦資金使用禁止だけなら、影
響は大きくないし、中国は宇宙開発面で、目下米国の資金を必要としていない」と涼しい顔だ
が、「米国の一部議員はことあるごとに、反華条文を盛り込もうとしており、米政府も妥協せ
ざるを得なくなってきた」という批判も忘れなかった。
■ネットスパイ戦争では「中国側が優位にある」
米中のスパイ事件で、最近特に警鐘を鳴らされているのはインターネット上のクラッキングに
よる情報収集だ。2009年3月にカナダ・トロント大学と英ケンブリッジ大学の研究チームが、
チベット亡命政府のネットシステムをクラッキングした中国を拠点とするインターネット上の
スパイ情報網「ゴースト・ネット」の存在を指摘し、世界103カ国の政府施設の1295台のコン
ピュータが被害にあっていると警告したことは記憶に新しい。
最近でもロイター通信(4月15日電)が、中国軍による対米ネット諜報活動「ビザンチン・ハ
デス」について指摘している。それによると、中国は目下、クラッキングによって米国の100京
ワード(京は兆の1万倍)をこえる敏感資料を盗み取り、その中には米国国務院のコンピュー
ターシステムおよび、数十億ドル規模の兵器プロジェクトに関わるコンピューターシステムの
情報が含まれているようだ。
>>3に続きます