世界有数の地震多発エリア・台湾では、1999年の台湾大地震の被災地を「教育園区」として
残すなど地震体験の継承が進む。東日本大震災に際し、台湾がいち早く支援の手を差し伸べた
のも、そのような土壌があるからだ。「同じ地震国として地震体験の共有ができれば」と、台北
駐日経済文化代表処の李明宗・横浜分処処長は話す。
台湾で発生する地震は、マグニチュード(M)4以上だけでも年平均200回を超す。中でも
1999年9月21日、中部を襲ったM7・6の「921大地震」(日本では台湾大地震と呼ぶ)
は台湾で20世紀最大の地震とされ、2400人以上の死者を出した。
この地震で全壊した中学校の校舎や運動場に現れた断層を保存・展示する「921地震教育園区」
が2004年、台中県に開園した。国立自然科学博物館の分館の位置付けで、子どもたちだけ
でなく観光客も訪れるという。「近くに台中随一の観光地・日月潭(にちげつたん)があるの
で、日本の方にも寄ってほしい」と李処長。
ほかの被災地でも、自然や伝統文化を生かした「エコツーリズム」とコミュニティー再生との
両立など、復興支援プロジェクトが継続中。運営主体は住民やNPOで、日本の阪神大震災の
被災地との交流も行われているという。
東日本大震災に際し、台湾はいち早く多額の支援金を送り、緊急援助隊も派遣した。李処長は
「同じ地震国として、人ごととは思えないというのが台湾国民の心情。今度は台湾が恩返しを
する番という気持ちもある。台湾と日本とで地震体験の共有ができれば」と、台湾大地震から
の復興で得たノウハウの活用などを呼び掛けている。
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李 明宗氏(り・めいそう)台湾・中央警察大学卒。警察官僚から外交官に転じ、1987年
台北駐横浜経済文化弁事処(現・台北駐日経済文化代表処横浜分処)秘書。台湾外交部(外務省)
領事事務局組長(相当部長)、台北駐日経済文化代表処査証部組長、同那覇分処処長などを経て、
今年2月から現職。57歳。台北駐日経済文化代表処は台湾の大使館機能、同分処は総領事館機能
を果たしている。
カナコロ 2011/05/16
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1105160022/