(2011年5月6日付英フィナンシャル・タイムズ紙)
米大手プライベート・エクイティ(未公開株、PE)ファンドのカーライル・グループが中国
で実施した2つの企業への投資に疑問の声が上がっている。2社はいずれも不正容疑を受け、
それぞれ上場する香港とニューヨークの株式市場で取引停止となった。
■IPO前の最悪のタイミング
容疑の発覚はカーライルにとり最悪のタイミングで起こった。総額約1060億ドルの資産を運用
する同グループは現在、新規株式公開(IPO)を検討しており、市場評価を高めることが最
重要課題となっている。
カーライルは、香港株式市場に上場するプランテーション経営の中国森林控股の11%の株式と、
米ナスダック市場に上場する肥料メーカー、艾瑞泰克の22%の株式を保有。両社ともこの数カ月、
当該の株式市場から取引停止処分を受けている。
企業価値向上を要求する香港のアクティビスト(活動家)のデビッド・ウェッブ氏は、「(英国
作家)オスカー・ワイルドの言葉を借りれば、まずい投資は1件なら不運と見なされるが、2件
となると不注意のそしりを免れない」と語る。
カーライルは近年、中国投資で投資家に潤沢な利益をもたらし同国で最も成功したPEファンド
のひとつだ。
しかし投資家や市場関係者は、カーライルが、この2企業への投資決断に至るまでに、どの程度、
事前の調査を行ったか疑問視する。別の大手PEファンドの幹部は、「立て続けに誤った投資
を行えば不注意と不運の中間と判断される」と指摘する。
■不完全な帳簿、横領、会計報告の遅れ
中国森林は2009年12月に香港市場で株式を公開。それに先立つ2年間にカーライルから5500万
ドルの資金を調達している。先週末、同社は4億1700万ドルの年間損失を計上したが、監査を
請け負う会計士事務所KPMGグループは、同社の会計帳簿記録が不完全なため、決算報告の
正確性は保証できないと表明した。
中国森林の李寒春・最高経営責任者(CEO)は、460万ドル横領の容疑で2月に中国本土で
逮捕され、同社の会計・財務部門の複数の社員は行方をくらましている。
一方、艾瑞泰克は、会計報告の期日順守を怠ったことでナスダックからの上場廃止回避に躍起
となっている。同社は05年、逆合併で上場を果たした。
同社はこの3年間に3つの会計事務所から監査を受けており、悪質な株価操作によってもたら
されたという不正容疑に対する独立した内部調査も開始している。
カーライルの祖文萃アジアファンド責任者は、「中国内外を問わず投資には必ずリスクが伴う。
カーライルは長期にわたり、辛抱強く問題解決に貢献するつもりだ。問題の2件を含め多くの
投資の最終的な評価はまだ定まっていない」と反論した。
By Robert Cookson & Henny Sender
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日経新聞社 2011/05/06
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