★東南ア、天然ガス市場「異変」 増える需要、取引価格は低下
東南アジアのエネルギー市場で“異変”が起きている。
天然ガスの需要が拡大しているにもかかわらず、取引価格は低下した。理由は何か−。
米エネルギー・鉱物資源コンサルティング会社のプラッツなどによると、
アジア太平洋地域の天然ガス需要は、2010年の78億立方フィートから、
15年には254億立方フィートに増加し、世界最大の市場になると予想されている。
インドネシアなど、東南アジアのエネルギー輸出国も、天然ガスについては輸入を始める。
資源獲得競争が国境を越えて繰り広げられているなか、
需要拡大とともに取引価格が上がるはずだが、
マレーシアでは天然ガスの取引価格が今年に入って約24%下落した。
マレーシアのスター紙によると、世界石油資本(メジャー)の米シェブロン、
米エクソンモービル、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが「脱石油」戦略のもと、
天然ガス開発を相次いで進めている。
つまり、需要を上回る勢いで天然ガスの生産が増加し、取引価格が下がったわけだ。
また、地底の泥質岩層に眠る天然ガス「シェールガス」や
石炭層に含まれる「炭層ガス(コール・ベッド・メタン)」が
技術進歩によって採取できるようになったことも、価格を押し下げている要因だ。
それら“新参もの”が現われたことにより、
世界の天然ガス推定埋蔵量は従来の2倍以上に膨らんだ。
ただ、埋蔵量が豊富とはいえ、いつまでも安値が続くと楽観視はしていられない。
アジア諸国の“天然ガスシフト”が急速に進んでいるからだ。
天然ガスは石油よりも二酸化炭素(CO2)排出量が約20%少ないため、
電力確保と地球温暖化対策の“一石二鳥”につながる。
さらに、窒素酸化物や硫黄酸化物などの大気汚染物質の発生量も少ないことから、
東南アジア諸国は競うようにして天然ガスの導入計画を進めている。
独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(川崎市幸区)によると、
早ければ11〜12年にタイとインドネシアで、
14〜15年にはマレーシア、シンガポール、ベトナムでも液化天然ガス(LNG)ターミナルが
完成し、受け入れが始まる。天然ガスの取引価格が上昇に転じる日はいつ来るのか。
予断を許さない。(シンガポール支局)
ソース サンケイビズ 2010.12.3 05:00
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/101203/mcb1012030502001-n1.htm