【東亜春秋】台北支局長・山本勲 日台分断を防ぐには
尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる日中対立が激化しているが、中国の不当かつ強力な攻勢を退けるには、
もう一つの尖閣問題に細心の注意を払う必要がある。台湾の馬英九政権もこの島の領有権を主張しているからで、
このところ中国から中台対日共闘の働きかけが活発化している。馬政権は否定しているが、政界や民間の一部では
呼応の動きもある。中国による日台分断を阻止するためにも、日本は懸案の日台漁業問題の解決を急ぐべきだ。
青年期に保釣(尖閣防衛)運動の活動家だった馬総統は「釣魚島は中華民国領」との立場を堅持する一方、
「(日台が)相手の立場を尊重して平和的に解決すべきで、大陸(中国)と連携・協力する考えはない」(本紙会見)と述べている。
しかし、その「中華民国」領土は中国大陸と台湾を包含しているため、政界や民間の一部で中国との
連携・協力の動きが絶えない。
9月の中国漁船衝突事件でも、台湾の「中華保釣協会」の活動家が北端の野柳港から香港・マカオの
活動家とともに尖閣諸島に漁船で出港しようとした。
「合法的な活動は認める」馬政権は、漁民の資格を持たない外部の活動家は排除したが、
台湾活動家の乗った漁船1隻の出港は認めた。
2008年6月の日本巡視船と台湾遊漁船の衝突事件では台湾内の反発が噴出、
良好だった日台関係が一触即発の緊張に包まれた。
その背景には、日本が排他的経済水域で不法操業する台湾漁船への取り締まりを強め、
多数の漁民が摘発されてきたことへの台湾側の鬱積(うっせき)した不満があった。
台湾漁民からすれば、日本時代を含む長い歴史の中で自由に操業していた海域で魚を取れなくなった。
近海は漁業資源が枯渇し、生活のために危険承知で日本の水域に入っては摘発され、高い罰金をとられる。
日本時代から台湾に暮らす大多数の台湾人はいたって親日的だ。しかし、この問題に限っては元来、
日本に厳しい外省人(戦後、中国から渡来した漢族)とともに、一気に反日機運が高まる。
この日台関係の“アキレス腱(けん)”を突くかのように、対日強硬派の軍部を中心に中国から尖閣問題での
対日共同戦線形成の呼びかけが活発化している。
以前にも触れたが、中国軍の“スポークスマン役”を演じる羅援・中国軍事学会副秘書長(少将)が8月に
「両岸(中台)の軍人が東シナ海や釣魚島、南シナ海の主権防衛で協力すべきだ」と提起。
9月末には台湾の尖閣抗議行動を称賛して「両岸や世界華人の(対日共闘)協力の契機になった」とエールを送った。
中台が「民間を起点に中国の主権擁護で協力しよう」(徐光裕元少将)との呼びかけに、
台湾軍の退役将軍から呼応する声も出始めた。
中国は尖閣問題を日台分断と中台統一の突破口にしようと狙っているようだ。
これを防ぐには、台湾を反日で一つにしかねない漁業問題の解決を急ぐ必要がある。
主権問題と漁業問題をひとまず切り離し、日台の特別な歴史関係にかんがみて台湾漁民の操業海域を広げる
何らかの暫定取り決めを結ぶ。そのためには官僚ベースで続けてきた従来の日台漁業交渉では、らちがあかない。
政治主導を唱える民主党政権は高度な政治決断に踏み切るべきだ。
MSN産経ニュース 2010.10.31 03:51
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101031/plc1010310351003-n1.htm 関連スレ
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http://kamome.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1288356999/