【ソウル】韓国政府がインターネット閲覧規則の撤廃を進めている。これによって国内のインターネット
ユーザーは、時代遅れのセキュリティ技術と、マイクロソフトのネット閲覧ソフト「インターネット・
エクスプローラー(IE)」による事実上の独占状態からようやく解放されることになる。
多くの国の政府は、インターネット閲覧市場でのマイクロソフト独占体制を突き崩そうとしているが、
韓国の規則はそういった動きとは対照的な内容だ。そのため韓国のユーザーは、インターネット
ショッピングをする際に、各サイトでプラグインプログラムのダウンロードを要求され(時には何度も)、
煩わしい思いを強いられてきた。
マイクロソフトの競合相手、インターネットセキュリティの専門家、ウェブサイト専門家、オープンソースの
ソフトウェアやネットワークの支持者らは、長きにわたって韓国の規則廃止を求めてきた。
閲覧規則によって、企業はスマートフォンへのサービス提供を妨げられている。これを規制当局が認め、
政府もようやく重い腰を上げた。政府の独禁当局も、米国や欧州連合(EU)の規制当局と同様、
マイクロソフトに支配されるインターネット閲覧ソフト市場で権限を行使する意向だ。
その結果、韓国のネットユーザーは、今後しばらく、ほかの種類の閲覧ソフトを試すと思われる。特に
銀行や店舗は、特別なセキュリティプラグインソフトやアプレットをインストールする必要のない、より洗練
されたセキュリティ技術やデータ暗号化技術を試用する見込みだという。
韓国が閲覧規制を設けたのは1999年。米国が暗号化技術の輸出を禁じたことに対抗し、ほかの
国々と同様、インターネット取引を保護する独自の方法を開発した。韓国政府が使用を決定した
ソフトウェアは、1996年にマイクロソフトが開発した「Active X(アクティブエックス)」のフレームワークを
利用していた。そのため韓国のユーザーは、インターネット取引をする際、基本的にIEを利用せざるを
得なくなった。
韓国の政府関係者は、このセキュリティ技術を外国にも販売したいと考えていた。ところが米国が
技術の輸出禁止を解除したため、技術は韓国政府が義務づけた水準以上に向上した。政府機関の
承認を受け、セキュリティソフトを開発、販売するソフトウェア会社は韓国にいくつも存在する。
政府の閲覧規則撤廃を訴えてきた高麗大学のKim Kee-chang法律学教授は、「韓国の状況は
現実に即していない。あらゆる市場機会が失われてしまった。残ったのは政府の権限だけだ」と指摘する。
政府が行動に踏み切ったのはつい最近だが、ソフトウェア開発者らは以前からこのような変化を
予期していたと、ソウルのソフトウェア開発会社InitechのKim Ki-young氏はコメントする。「われわれは
これまで十分に準備をしてきた。現在のセキュリティ技術に変更があっても、ビジネスに大きな影響はない」
5月後半、韓国の放送通信委員会(KCC)は、セキュリティ規則を変更すると発表した。従来の
規則がスマートフォンに関わる新しいインターネット環境に適さず、非常に複雑であることがその理由だと
いう。
先週、韓国金融監督委員会(FSC)は、インターネット取引で政府が義務づけるセキュリティ技術に
加え、それと同等以上の技術を利用することも可能にすると発表した。この変更は7月1日から実施
されるが、各企業がウェブサイトを修正し、消費者がほかの閲覧ソフトで取引が実施できるようになる
まで数週間かかる見通しだという。
ウェブ開発会社の役員を務めるYun Seok-chan氏が収集したデータによると、韓国では、Mozilla
(モジラ)が開発したオープンソースインターネット閲覧ソフト Firefox(ファイヤーフォックス)が約500万回
ダウンロードされているにもかかわらず、ファイヤーフォックスの定期的な利用者は50万人程度にとどまって
いるという。同氏はこういった現状から、市場が変化を求めていることは明らかだと指摘する。非営利
ソフトウェア開発組織を推進する同氏は「これまでの環境は、ユーザーが結局はマイクロソフトのIEに
戻らざる得ないような環境だった」と語っている。
http://jp.wsj.com/World/Europe/node_77968