徳島県内のニュース
外国人参政権 行方不透明に 県内、期待と不安交錯 2010/3/7 10:40
永住外国人に自治体の首長や議員の選挙権を与える地方参政権の行方が不透明になっている。
実現に前向きだった政府は連立与党の足並みがそろわず、法案の今国会提出を見送る見通し。
それでも、徳島県内で参政権を求めてきた在日韓国人らは、議員立法などでの実現に期待をつなぐ。
一方で「内政干渉につながりかねない」と反対してきた自民系県議や市民団体は阻止運動を続ける構えだ。
「政局の都合で棚上げにされた感があり、少し残念だが、与党への期待の大きさは変わらない」。
在日本大韓民国民団(民団)県地方本部の崔相周(チェサンジュ)団長は、今の心境をこう表現する。
県地方本部は1995年、本格的に参政権運動を開始。意見書などを国に提出するよう、県や市町村の議会に働きかけてきた。
崔団長は「参政権は長年の夢」と言う。神戸市生まれの在日2世。20歳だった57年、結婚を機に小松島市内に移住、
同市内での生活は半世紀を超えた。
「地域の皆さんと一緒に投票に行きたい。選挙権が与えられて初めて住民と認められる気がする」と訴える。
民主党は98年の結党以来の基本政策として「地方参政権は早期に実現する」と掲げており、県連も同様の考え。
「国会などでの議論を注視していく」として、今のところ具体的な行動は取っていない。
橋本幸子幹事長(阿南市議)は「永住外国人は長年納税しており、義務に見合った権利を与えるべきだ。
少子化や過疎化が進む今、地方こそ外国人の力が必要になる時が来る。共存共栄していけばいい」と強調する。
自民党県連は「選挙権付与は(国民固有の権利とする)憲法15条に抵触する」などの理由から、参政権に反対する。
県議会の自民系3会派は、法案提出の有無にかかわらず、2月定例会に反対意見書を提案する方針。
竹内資浩会長代行(県議)は「日本国籍を取れる資格がある人は取るべきだ。取らないのは政治的な思惑があるのではと
思ってしまう」と言う。
市民の間にも新たな動きがある。1月下旬、「外国人参政権を阻止する徳島の会」など反対を掲げる2団体が発足した。
両団体は3月7日、徳島市内中心部で、法案提出阻止を訴えるデモ行進を行う。
徳島の会の吉川正輝さん(58)=政治団体役員、同市南田宮4=は「参政権付与は他国の内政干渉を生む危険をはらんでいる」
と懸念する。
在日コリアンでも、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)県本部は反対の立場だ。崔(チェ)永(ヨン)寛(グァン)常任委員長は
「参政権付与よりも国交正常化が優先すべき課題だ」と訴える。民主党の議連が昨年まとめた提言は、
選挙権付与の対象から「朝鮮」籍保持者を排除。これに対しても「民族差別的発想だ」と非難する。
高松入国管理局によると、日本の永住資格を持つ外国人は県内に986人(2008年末現在)。
年々増えており、10年前に比べ約2倍となっている。国籍別のデータはないが、在日コリアンや中国人の割合が高いとみられる。
参政権付与の気運が高まるきっかけになったのは1995年の最高裁判決。
「外国人に地方選挙権を付与することは憲法上禁止されていない」と初判断を示した。
これを受け、公明党や民主党などが98年以降、国会に関連法案を提出したが、いずれも廃案になった。
徳島県議会は97年、参政権付与を国に求める意見書を可決している。自民系会派も当時国政で連立与党を組んでいた
公明党に配慮し、賛成に回った。
国立国会図書館によると、海外では欧州を中心に40カ国程度が外国人の参政権を認めている。欧州連合(EU)加盟国は
お互いの国民に地方の選挙権と被選挙権を付与。アジアでは、韓国が05年、永住資格を得て3年が経過した外国人に
地方選挙権を与えた。
経済協力開発機構(OECD)加盟の30カ国のうち、外国人に選挙権を付与せず、かつ二重国籍も認めていないのは
日本だけという。
http://www.topics.or.jp/localNews/news/2010/03/2010_126792617918.html