民間人登用案2カ月近く放置 拉致問題対策本部
北朝鮮による拉致問題の情報収集強化を狙い、政府の拉致問題対策本部に民間の専門家を
登用する人事案が2カ月近く、決裁されずに放置されていることが、政府関係者の話でわかった。
中井洽拉致問題担当相の人事案に脱北者支援の活動家が含まれ、
政府内に中国政府の反発を懸念する声があるためという。
政府関係者によると、人事案は中井氏の指示を受けて対策本部事務局が作業。
昨年12月中旬、「北朝鮮難民救援基金」の加藤博理事長ら3人を、大臣直属の参与とする案を固めた。
加藤氏は北朝鮮の難民支援に取り組んでおり、北朝鮮内の情勢に精通。
事務局の情報室と連携し、情報収集を行う予定だった。
しかし平野博文官房長官が決裁を保留。加藤氏は2002年に中国で
「北朝鮮住民の不法入国を助けた」として公安当局に一時身柄を拘束されており、
政府内に中国側の反発への懸念が出たためだ。
政府は昨年10月、安倍晋三内閣の下で設置された拉致問題対策本部を廃止し、
新たな対策本部(本部長・鳩山由紀夫首相)を設置した。中井氏は「自民政権では、
情報収集の面で機能していなかった」と批判。事務局の人員増と民間専門家の登用で、
拉致被害者や北朝鮮国内の情報収集を強化する方針を打ち出した。
2010年度予算案は、費用を前年度比4倍の8億6400万円に増額。
ただ、具体的な方策は固まっていない。
一方、北朝鮮への対応方針をめぐっては、国会で野党から批判を浴び続けている。
自民党政権下では「拉致被害者の安全確保と帰国」「事件の真相究明」「実行犯の引き渡し」の
3項目を、絶対的な要件と位置づけていた。これに対し、鳩山政権は昨年10月の閣議決定文書で、
3要件のうち「実行犯の引き渡し」を削除。北朝鮮は、欧州での日本人拉致事件にも関与した
とされる「よど号」ハイジャック事件の実行犯と妻らの帰国に前向きとされ、
中井氏は「帰国により拉致問題が幕引きにされては困る」と説明。
しかし、納得のいかない野党側は同じ質問を繰り返す。
こうした状況に、被害者家族たちは不安を募らせる。1月下旬の集会で、家族会の飯塚繁雄代表は
「政府に具体的な動きがみられず、心配している」。増元照明事務局長も
「鳩山総理が言う『命を大切にする社会』の命に、拉致被害者は入っているのか。
熱意が感じられない」と訴えた。
朝日新聞 2010年2月17日1時15分
http://www.asahi.com/politics/update/0216/TKY201002160127.html