【中国】中国の高速鉄道、またも『国威発揚』のための箱モノか[02/02]
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はらぺこφ ★:
その次は、高速鉄道「和諧(調和)号」である。調和号も、今の段階では国威発揚のための箱モノとしか
いいようがない。最高速度は250キロ以上や350キロ以上を出せるはずだが、鉄道自体があまりよくできて
いないためか、持続的に速いスピードを出して運転するのは無理なようだ。速度電光掲示板を見ると、100キロ
を下回る時はしょっちゅうある、もちろん、それは駅に差しかかる時や駅から出発する時を除いての話である。
ほかに大変残念に思っているのは、本数が極めて少ないことだ。たとえば、上海南駅から浙江省横断の鉄道
は上海市から江西省への唯一の大動脈であるが、上海南駅から南昌駅方面に向かう高速列車「調和号」は1日
にわずか1本しかない(D93、15時22分発、20時47分着)。また、南昌駅から上海行きの同列車も1日1本のみ
(D92、8時15分発、13時45分着)。距離は817キロメートルで、特急列車だと、両地点を走る時間は最短でも
約10時間かかる。それに比べれば、確かに5時25分の「調和号」は非常に速い。問題は本数が少なすぎること
で、本来発揮しなければならないはずの速さおよびそれが可能にする利便さは現状ではほとんど感じられない。
その1本の列車に乗るために、待たなければならないし、時間の調整が非常に難しくなるからだ。
もう一つは、運賃が現実離れで、高めに設定されていることである。私の経験では、「調和号」に出稼ぎ
農民はほとんど乗らない。それもそのはずだ。
2009年12月26日、内陸部の大都市・湖北省武漢と華南の中心都市、広東省広州を結ぶ高速鉄道(武広高速鉄道)
が正式に運行をスタートした。全長1069キロメートル、最高時速350キロメートル。在来線で10時間以上の区間
が約3時間で結ばれ、中国国内では「世界最高速」の列車と喧伝されている。確かに所要時間は大きく短縮さ
れたが、大幅に引き上げられた運賃はマスコミをはじめ早くも国民から顰蹙(ひんしゅく)を買っている。
武広高速鉄道の運賃は1等車780元、2等車490元となっている。現在の武漢〜広州の運賃は寝台で約250元、
普通座席なら160元程度なので、数倍も引き上げられたというわけだ。これに対して、ある新聞記事は次の
ように痛烈に批判している。
「富裕層にとってみれば、高速鉄道利用は、場合によっては飛行機よりも速いケースもあり、航空機の格安
チケットと同等の490元という価格設定は決して高いものではない。しかし都市部の低所得者や出稼ぎ農民に、
この運賃はどう映るだろうか? 武漢〜広州間は旧正月の混雑期ともなれば乗客の大半はこうした出稼ぎ農民
や労働者であるとの指摘もある。こうした人々にとって、490元という値段は1カ月の生活費にも匹敵し、
とても負担できるものではない。高速鉄道の高運賃はこうした中国社会の貧富の二極格差拡大の現状をあぶり
だしている。」
(『世界最高速』列車の高料金に不満 田中信彦の中国メディア斜め読み」『週刊東洋経済』2010年1月16日より引用)
報道によれば、中国の鉄道営業距離は09年末時点で8万6000キロメートルに達して世界2位となり、また現在
までに、旅客専用路線2319キロメートルが完成したことを受けて、高速鉄道営業距離はすでに世界一となった。
何でも世界一を目指す。その気合いと迫力は称賛に値するものである。ただ、国民の目線で物事を進めてい
くことがその大前提となる。社会の下層などを含む国民大多数の利益を考慮せず、ひたすら「世界一」を
追究するということであれば、まさに本末転倒であり、いずれ破綻してしまうのはすでに多くの事例が証明
している。その教訓を真摯に受け止め、上手に活かしていくことが、中国のインフラ整備においても大きな
課題ではないだろうか。
(執筆者:王文亮 金城学院大学教授 編集担当:サーチナ・メディア事業部)