中国人男性らの控訴棄却 酒田港強制連行賠償請求訴訟
太平洋戦争中に中国から酒田港(山形県酒田市)に強制連行され、過酷な労働を強いられたとして、
中国人男性(89)と遺族ら13人が国と酒田海陸運送(旧酒田港湾運送)に計1億5000万円の
損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は20日、会社と国の不法行為などを認めた上で、
請求を退けた一審山形地裁判決を支持、男性らの控訴を棄却した。男性らは上告する方針。
小野貞夫裁判長は「被害者らは強制労働で精神的、肉体的苦痛を被ったことは明らかだ」と指摘し、
会社の安全配慮義務違反も認定。
一方で「任意の被害救済に向け、関係者の真摯(しんし)な努力が強く期待される」と述べ、法的な解決を避けた。
損害賠償の請求権については、日本と連合国のサンフランシスコ平和条約(1951年)と同じ枠組みにある
日中共同声明(72年)で、個人の権利は放棄されているとして認めなかった。
判決によると、男性らはだまされたり暴力を振るわれたりしながら貨物船で連行され、酒田港で石炭や
船の荷物の運搬作業を強いられた。
訴訟は、強制連行された中国人男性6人が2004年12月に提訴した。うち3人が死亡し、遺族が訴訟を引き継いだ。
弁護団の加藤実団長は「国と企業が共同で行った強制連行を認め、任意解決に言及したことは評価できる。
ただ、判決は司法の役割を放棄していて許し難い」と語った。
◎悔しさの一方「前進」も原告会見
「判決は納得できない。無効だ」。仙台高裁で20日、酒田港強制連行・労働訴訟の控訴審判決を聞いた
原告の檀陰春さん(89)は悔しさをにじませた。
一方で、判決に被害救済を促す言葉が盛り込まれたことに弁護団から「一歩前進した」と評価する声も上がった。
檀さんは判決に合わせて18日に来日。判決後、仙台市青葉区の仙台弁護士会館で記者会見し
「敗訴で自信をなくしたわけではない。上告して最後まで闘う」と語った。
訴えによると、檀さんは1944年末、突然中国人に捕まり、日本に強制連行された。
翌年8月まで、酒田港で船の積み荷などを運ぶ作業を1日14時間以上させられた。
食事は1個50グラムほどの蒸しパン2個だったという。
判決は、原告側の主張をおおむね認めた上で檀さんらを「被害者」と表現し、当事者間での解決を促した。
弁護団によると、強制連行・労働訴訟15件で、高裁判決に被害救済が盛り込まれたのは初めて。
同種訴訟をめぐっては西松建設が10月、被害救済の基金を設け、謝罪することで和解が成立。
福岡、長崎、宮崎、長野の訴訟では、原告側が最高裁に上告している。
中国人強制連行・労働事件全国弁護団幹事長の松岡肇弁護士は「今は時間に例えれば午前3時。
間もなく夜が明ける」と期待を口にした。
2009年11月21日土曜日
http://www.kahoku.co.jp/news/2009/11/20091121t53023.htm