>>1 次の二つのことは,絶対に軽視してはならない。
第一は,忍耐と寛容をもってすれば,人間の敵意といえども溶解できるなどと,思ってはならない。
第二は,報酬や援助を与えれば,敵対関係すらも好転させうると,思ってはいけない。
-『政略論』-
謙譲の美徳をもってすれば相手の尊大さに勝てると信ずる者は,誤りを犯すはめにおちいる。
-『政略論』-
権力をもつ人びとの間でも,最近に与えた恩恵によって,以前の怨念が消えるなどと思う人がいたならば,その人は,とり返しのつかない誤りを犯すことになる。
-『君主論』-
君主は、自らの権威を傷つける恐れのある妥協は、絶対にすべきでない。
たとえそれに耐え抜く自信があったとしても、この種の妥協は絶対にしてはいけない。
なぜなら、譲歩に譲歩を重ねるよりも、思い切って立ち向かって行ったほうが、たとえ失敗に終わったとしても、はるかによい結果を生むことになるのが、ほとんどの常だからである。
もしも、正面衝突を回避したい一心で譲歩策を取ったとしても、結局は回避などできないものだ。
なにしろ、譲歩に譲歩を重ねたところで相手は満足するわけでもなく、それどころか相手の敵意は、あなたへの敬意を失ったことによって、より露骨になり、より多くを奪ってやろうと思うようになるのがオチなのだ。
また、思慮もない単なる譲歩策によって示されたあなたの弱みは、味方になりえた人々をも失望させ、彼らを冷淡にさせてしまうだろう。
反対に、もしもあなたが、相手の真意が明らかになるやただちに準備をし、たとえ力が相手に劣ろうとも反撃に出ていたら、敵といえどもあなたに敬意を払わざるを得なくなるのである。
そして、他の国々も敬意を払うようになり、結果としてあなたは味方を獲得することになる。
-『君主論』-
一国の国力を計る方法の一つは、その国と近隣諸国との間に、どのような関係が成り立っているかを見ることである。
もしも近隣の諸国が、友好関係を保ちたいが為に貢納してくるようならば、その国は強国といえよう。
反対に、弱体なはずの近隣諸国であるのに、それらの国々に対し金銭を以て援助する関係である場合、その国家の国力は弱いと思うしかない。
この原因は、一に、自国の民の武装を怠り、他国民の傭兵に頼ったことにある。このように近視眼的な国策は、ひとまずの現状打開には役立っても、終局的には国家の命取りにつながらざるを得ないのである。
-『政略論』-