自他とも認めるケータイ大国の韓国。だがその隣国である北朝鮮のケータイ事情についてあまり知られる
ことは少ない。韓国メディアが報じた内容から、北朝鮮ケータイの実情に迫った。
韓国の携帯電話サービスの発展は目覚ましいが、すぐ隣にある北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)
のケータイ事情はどうなっているのだろうか。一般向けの携帯電話サービスがあるのかないのか。存在する
ならばどの程度のユーザーが使っていて、どんな内容のサービスなのだろうか。厚いベールに覆われた“謎の
国”のケータイ事情を、韓国から垣間見た。
GSMサービスを2002年から開始
韓国政府の統一部が2003年2月に発表した資料によると、北朝鮮は2002年11月に首都平壌とロシア
国境にある経済特区の羅先でGSM方式のサービスを開始したという。経済発展のためには携帯電話など
通信網の充実が不可欠――という政府の判断によって導入されたようだ。タイのLoxleyグループ傘下の
Loxley Pacificが事業化を進め、運用は政府との合弁企業である朝鮮逓信会社が行っていた。
端末の価格は「高額に設定」(統一部)されていたようで、誰でも簡単に使えるものではなかったようだ。
『韓国日報』は1台980ユーロ(約13万円)もしたと報道している。その後は端末の価格下落などで利用者
も増え、北朝鮮のGSMサービスは約2万人が利用していたといわれている。
2004年5月には、北朝鮮に居住する外国人も携帯電話を利用できるよう許可が下りた。ところが、これ
とほぼ時期を同じくして北朝鮮は、一般人が所有している携帯電話を回収し、使用を制限するように
なった。はっきりとした理由は分かっていないが、韓国メディアは1カ月前に起きた龍川駅列車爆発事件が
その引き金になったと見ている。
2004年4月、中国国境に近い平安北道龍川郡の龍川駅で大規模な爆発事故が発生した。車両
交換所で硝酸アルミニウムを乗せた貨物列車が衝突し爆発、約150人の死亡者と約1300人の負傷者を
出したといわれている。この直後から北朝鮮は情報統制を強め、内部情報が外部に流出することを憂慮
して、自国民の携帯電話利用を制限したようだ。
ただ、人々のケータイ熱はさすがの北朝鮮政府でも統制できなかったのか、それ以降も一般のケータイ
ユーザーが存在したようだ。『連合ニュース』によると北の住民たちは、中国国内から携帯電話をこっそり
仕入れ利用していたという。中国内の基地局電波を使うため、丘の上など見晴らしの良いところに行か
なければ通じないことも多かったというが、それでも便利さは何にも代え難く、政府が締め付けに躍起になる
なか利用者は増える一方だったという。
加入者2万人を超えた3Gサービス
北朝鮮内の携帯電話サービスは2004年春にいったん停止したが、一部の外国人向けに提供された
ほか、中国から持ち込んだヤミケータイのユーザーもかなりに上ったようだ。
それから約4年半。韓国統一部によると北朝鮮は、2008年12月からW-CDMAによる3G携帯電話の
サービスを開始した。エジプトのOrascom Telecom(OT)と北朝鮮の逓信省が“チェオ”という合弁会社を
設立し、「KORYO LINK(コリョリンク)」というブランドでサービスを提供しているという。
同社は本サービス開始前の2008年5月から試験サービスを行っており、平壌とその周辺に12万6000人
程度が利用できるサービスエリアとインフラを敷設した。『アジア経済』によると、チェオはサービス開始から
3年間で4億ドル(約382億4800万円)を投じて、平壌を含む主要都市でW-CDMAサービスを提供して
いく予定だ。
当初は高級官僚向けに“優待価格”として約200ドル(約1万9000円)で販売していたが、のちに一般
向けに加入費と端末費を合わせて350ドル(約3万3500円)で発売。始めは思うように加入者が伸びな
かったようだが、一般にも提供することで加入者が確保できたという。
(続く)
http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0906/24/news021.html