【書籍】 部落と在日 噛み合いそうで噛み合わない対話〜『差別と日本人』…野中広務×辛淑玉著(評者:朝山 実)★2[06/19]

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1イマジンφ ★
「三国人発言」をはじめ、石原慎太郎都知事はどうしてこんなにも差別発言を繰り返す
のか……。あきれて憤る辛淑玉氏は、対談の相手である野中広務氏もまた疑いなく、
自分に同調するものだと思い込んでいた。しかし、「昨夜石原と飯を食ったんですよ」
と、返され、「え? なんで石原さんと御飯食べられるんですか。なんで!?」

辛氏が思わず問い質す場面は、ある意味この本のクライマックス部分にあたる。
野中氏に対して、辛氏は差別の痛みを分かち合うことのできる人間との認識がある
からこその、「え?」だ。あの石原都知事となごやかに食卓を囲む場面が想像つかず、
「どうして?」を連発、激しく詰め寄る辛氏に、野中氏は、「あんなのボンボンですよ」
「あれはまたいい男だから」「彼にも、僕のように忠告をできる人間がおらんといかんでしょ」

メシを食ったぐらいのことでなんで大騒ぎするのか。不思議だというふうに、野中氏が
首を傾げる様子が目に浮かぶ。同時に、周到な根回し、仇敵であろうとも必要とあれば
手を結び、川底をさらうかのような情報収集で弱みをつかんでは、政敵を震え上がらせた
辣腕政治家の一端が覗き見える場面でもある。
本書では、総理に推す声が高まりながら、これを辞退し、2003年に政界から引退したものの、
いまも存在感を示す野中広務をゲストに、「在日朝鮮人」の辛口コメンテーター・人権問題
活動家として知られる辛淑玉がホストとなって問いかける。対談のテーマはずばり、差別。

被差別部落の話をさせたいのに…
自民党の総裁選に出馬すれば、過去を洗いざらいネタにされる。野中氏がいちばん気に
かけたのは、自分が被差別部落の出身であること。これまで公式の場で二度、明らかに
してきたものの、一般にはそれほど知られていたわけではなかった。しかし、一国の首相
を争うともなれば、メディアが放っておくはずがない。自分はよしとしても、家族に被害が
及ぶのは避けたかった。明言はされていないが、それが理由だとささやかれてきた。

だから、この問題に正面から切り込んでいった対談集は、貴重である。ただ、内面を赤裸々
に吐露したものを期待すると、前半は失望させられる。辛氏は歴史をひもとき、被差別部落
の出身者としての痛みを語らせようとするが、野中氏は自分を政治の世界へ向かわせた
一件(大阪鉄道局に勤務していた若かりし頃、弟のように面倒をみた同郷の後輩が、陰で
「野中は部落だ」と吹聴し、野中氏の昇進をねたむ職員たちが騒ぎだした。この直後に大鉄
局を退社している)以外、差別を受けたことの怒りは、辛氏のようにストレートに表明しない。

対談は雑談トークで和やかに盛り上がるものの、テーマとかかわる話になると野中氏
の口は重たく、失速しかかる。噛み合わなさをフォローするかのように、辛氏はインタビュー
本文と別ワクで、読者に差別に関する理解を求めるべく、資料を提示している。
たとえば、1923年に発生した、死傷者20万2436名、行方不明者4万人を超えるといわれる、
関東大震災(※数字は本書より)。「朝鮮人が井戸に毒を入れた」といった流言蜚語を発端
に、自警団などによる朝鮮人の虐殺が行われたが、犠牲となったのは朝鮮人だけでは
なかったことをあげている。

当時、千葉の福田村(現在の柏市)では、香川県から薬の行商にやってきていた女性や
幼児を含む日本人10人が、竹棒やとび口を手にした自警団の人々によって惨殺された。
彼らのうち8人が3年から10年の懲役刑に処せられたものの、昭和天皇即位による恩赦で
釈放。しかも取調べにあたった検事は、「彼らに悪意はない」と情状酌量を求め、殺害の
中心人物の一人は後に村長となった。不条理きわまりない事件だが、被害者が被差別
部落の出身だったことが、大きく影響していたという。

これは辛氏が在日朝鮮人の歴史を調べていくうちに知った事件であり、「部落」と「朝鮮」
との関わりから話題にあげるのだが、野中氏は、とくに部落に関わる事件だからといって、
話に乗ってくるわけではない。あるいは、終戦の昭和20年、野中氏は軍隊に入隊したの
だが、入隊名簿の名前の上に、○印がつけられていたという。
>>2以降に続く
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20090618/197993/book.jpg
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20090618/197993/
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20090618/197993/?P=2
ソース:日経ビジネス
前スレhttp://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1245366793/
★1が立った時間:2009/06/19(金) 08:13:13
2イマジンφ ★:2009/06/20(土) 01:26:23 ID:???
>>1の続き
「部落民」を識別する印だった。辛氏は、それを知ったときの心境を訊こうとする。ぜひとも
野中氏の肉声で語ってもらいたいところだが、ここも辛氏の筆で、当時どれだけ軍隊内で
部落出身者に対する差別があったのかが綴られるのみである。

冤罪が疑われる狭山事件(1963年に埼玉県狭山市で起きた女子高生誘拐殺人事件。
警察の初動捜査のミスと、逮捕された青年が部落出身者であったことで社会的な注目
を集めた)に関する話題をふってみても、野中氏の反応はうすく、その都度、辛氏が
対談相手の心中をときに補い、地の文章にしてまとめている。度々挿入されるこうした
「まとめ」や補足は対談集としてみると、いささか違和感がある。

いかにも政治家らしい、はぐらかしであるならば、それもありのまま記すのがよかったの
ではなかろうか。そんな不満を抱かせる。が、そんな評価を一変させるのは、後半だ。

聞き手の位置からでは聞き出せなかったこと

ラストちかくになって、聞き手にまわっていた辛氏が、個人的な体験を語り始める。

自らが本名を名乗ることによって、家族に対する嫌がらせが続き、あるとき兄からこんな
ことばを投げつけられる。「本名で生きているおまえは親戚じゅうから嫌われているんだぞ」

肩を落とす辛氏に、野中氏が、「わかるなあ。僕も同じだから」と応じる。辛氏の話は
どこに流れるともつかぬまま、堰をきったかのように止まらなくなる。あんたはよく
頑張った、そのとおりだと野中氏がうなずく。攻守が逆転した瞬間だ。

野中氏は、辛氏に自分を重ね見ていたのだろうか。ひとに語ることのなかった、孫が
中学のころに受けた差別や、自分と結び付けられたくないからこそ娘のやっている
児童劇団を観ることもできずにいると口にしはじめるのだ。

丁々発止な対談を想像すると、構成からして本書には欠陥がある。しかし、考えて
みれば「差別」の一点以外に接点の乏しいふたりが膝を詰めて話すというのは、この
ようにうまくいかないことのほうこそ自然なのではないかとおもわせる。そして、胸を
ひらいてこそ、相手もまた同じ態度を示す。人間関係の基本ともいえる、そのことに
あらためて気づかされもする。尚、野中氏に対する興味をもたられたならば、魚住昭著
『野中広務 差別と権力』の併読をおすすめする。野中氏が本となることに神経を尖らせ
ていたといわれる、綿密にして骨太なノンフィクションである。暴露本にあらず。
アイデンティティの悩みを抱えながら政治の世界に生きた野中広務が記されている。

(文/朝山 実、企画・編集/須藤 輝&連結社)

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