新華社電によると、ロシアの政治評論家ビャチェスラフ・ニコノフ氏はこのほど、第二次朝鮮戦争勃発
に関する見方を明らかにした。ニコノフ氏政治基金総裁で、政治評論家として活躍しており、政権内部の
情報にも精通しているとされる。以下は、ニコノフ氏の同問題に対する見方の趣旨。
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戦端を開く可能性が最も高いのは、武力を誇示している北朝鮮だ。しかし、同国指導者の目的が
戦争でないことも明白だ。彼らは自殺願望者ではない。戦争は極めてリスクが大きな賭けで、そうた
やすく始められるものではない。
北朝鮮指導者は、なぜ「核」を欲したのか。平壌(ピョンヤン)の知人に聞いたところ、彼らはユーゴ
スラビアやイラクの運命を注視した。そして、米国は核を持つ国を攻撃しないと考えた。核の放棄と
安全保障で米国と直接交渉し、6カ国協議参加国からは経済援助を引き出そうと考えた。しかし彼らに
言わせれば、米国は対話に応じず、日本もまた、自らが承諾した義務を果たそうとしなかった。
韓国の李明博(イ・ミョンバク)政権は、強硬政策を宣言した。
そのため北朝鮮は、「核計画中止」という譲歩をしても得るものはないと判断した。今回の核実験は、
1種の見せかけだ。目的は攻撃能力を得ることではなく取り引き、特に米国との取り引きだ。
北朝鮮が攻撃するとすれば、どの国か。米国は無理だ。理論的には、敵視を続けている日本を攻撃
することもありうる。しかし現実的に可能なのは、韓国攻撃だろう。しかし、北朝鮮は韓国政府を憎んで
いるといはいえ、同じ民族だ。同胞との戦争はどうしても避けたい。また、韓国と戦争になれば、ただち
に米国が参戦することは明らかだ。金正日(キム・ジョンイル)あるいは後継者、そして北朝鮮の幹部が
自滅の道を歩むことはありえない。
それでは、北朝鮮を攻撃する可能性があるのは、どの国か? 韓国か? ありえない話だ。韓国は
北朝鮮以上に戦争を避けたいと考えている。韓国は、北朝鮮の極めて大量の武器が、自国都市に
照準を合わせていることを痛感している。核兵器を使わなくとも、戦争になればソウルをはじめとする
韓国の都市は、地上から消滅する。
米国はどうか。米国も戦争を望まない。イラクとの戦争に勝利した直後、米国の新保守主義者は
朝鮮半島の問題を武力で解決しようと計画した。しかし、オバマはイラクから撤退し、将来的には
アフガンからも撤退しようとしている。一方、朝鮮半島で戦争を起こしても、得られるものは乏しい。
ワシントンがこのような状況で、武力干渉を望むとは考えられない。
日本も戦争には反対するだろう。日本は北朝鮮のミサイル攻撃を非常に恐れている。日本の軍備は
充実しているが、北朝鮮との戦争には同意できない。
中国とロシアも、対北朝鮮戦争には同意しない。北京とモスクワは、あらゆる手段で朝鮮半島の戦争を
阻止する。米国は、北朝鮮への開戦を欲したとしても、国連安保理で自らの行為を正当化することは
絶対に不可能だ。
可能性として残るのは、偶発的な戦争勃発だ。戦争というものは、緊張している地域で人々の意表を
突くかたちで始まることがある。例えば、北朝鮮の船舶に対する臨検だ。経済的に追い詰められている
北朝鮮は、なんとしても輸出の道を維持しようとするだろう。そして、北朝鮮の重要な輸出品が武器で
あることは、周知の事実だ。臨検により海上で発生した衝突が、戦争に発展する可能性は、低いとは
いえない。
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◆解説◆
朝鮮半島で戦争が起これば、韓国と日本に多大な犠牲者がでることは、ほぼ確実。また日韓両国の
経済が甚大な被害を受け、世界経済が極めて深刻な影響を受けることも明らかだ。
また、戦争による北朝鮮の崩壊の結果、北東アジアの政治・軍事のバランスが崩れることは、中国や
ロシアにとって「悪夢のシナリオ」だ。中国にとっては朝鮮半島での戦争の結果、国策の「東北地方の
振興」が挫折する可能性も高い。
関係国がすべて戦争を欲しない状況にあり、懸念すべき可能性は「偶発的戦争勃発」と、ニコノフ氏は
主張する。国連安保理の制裁案で、日・米・韓と中・露の間の大きな意見の隔たりは「臨検問題」だった
とされる。ニコノフ氏の見方にもとづくと、中・露が同問題で「含みを持たせた」方法に固執したのは、
偶発戦争の可能性を少しでも低減する狙いがあったということになる。(編集担当:如月隼人)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0612&f=politics_0612_007.shtml