【国際問題・Hebei Spirit号事件】韓国法廷の判決に対する海運業界の失望★5[04/24]

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809地球の裏側 ◆/lYVcP7um2
>>805
判決文では、強力後進をかけてでも回避しろ、あるいは、錨泊であってもエンジン
をスタンバイにせよ、と書いてあります。
これは「物理的不可能の不作為をもって有罪の根拠となしています。」
また、油槽間の移送についても触れていますが、普通日本の海難審判で必ず
規定される、事故発生以前の油槽の状況が欠落していますから、裁判所は
規定されていない油槽の状況に基づいて、油槽間移送の不作為を有罪の根拠
にしています。この事故発生以前の油槽の状況は、状況証拠となるものですから
必ず調べが行われていなければなりませんし、それは自動記録により必ず船に
残っています。

この判決は、多分、世界海難史上、まれに見る珍妙な判決となると思います。
回避義務の適用を根本部分(航行中と錨泊中)で間違い、物理的不可能な行為
をなさなかった事を有罪の根拠とし、裁判所が知り得ない状況に対して行為
が可能と判断している、などなど、このままでは韓国に寄港する事は相当に
大きな「リスク行為」を意味しています。

ちなみに、エンジンスタンバイをなぜしなかったのか、ですが、この手の船
は、減速装置無しの直結軸が普通で、中立状態はプロペラピッチを変えて
行います。したがってスタンバイ状態でもプロペラは回転しているのが普通
なのです。長尺曳航物との衝突が想定される場合、プロペラの回転は停止
させます。なぜならば、長い曳航索を巻き込んだ場合、衝突よりも厄介な
状況になるのを未然に防止するためです。
もう一点、法律上、このバージが運転不自由船の状態に陥るのは、衝突14分
前の曳航索切断後です。それ以前は操縦制限船としての扱いになります。
ただ、どちらにせよ、「航行中」なのはバージであり、第一義の回避義務は
バージにあります。それが不可能というならば、その不可能を引き起こした
原因をもって有罪/無罪を判定すべきであり、因果関係に照らせば、荷油
流出の第一原因となります。