「隠れ家」50室250万円 不法滞在者向け斡旋ビジネス ――追う
逮捕の男「名義貸し大勢いる」
昨年6〜8月、覚せい剤密売に関与したなどとして、愛知県警に相次いで逮捕されたイラン人5人に、
マンションなどを世話していた1人の男がいた。不法滞在者に住まいを斡旋する違法ビジネス。
口コミなどで客を集め、1件につき数万円の手数料を受け取る。読売新聞の取材に応じた男は、
「『名義貸し』でもうけている日本人は、ほかにも大勢いる」と、裏社会の一端を証言した。
(河村武志)
薬物密売のイラン人グループを調べていた県警捜査員は、5人の自宅から押収した賃貸契約書
に“共通点”を見つけた。借り主はいずれもイラン人本人ではなく、名古屋市内の男(61)と、
男が経営する中古車販売会社だった。
「こいつは、外国人に住まいを斡旋するブローカーだ」。捜査員は直感した。
昨年8月。県警は、不法滞在のイラン人(28)(すでに強制送還)に自分の会社名義で
借りたマンションを斡旋し、手数料を得ていたとして、この男を入管難民法違反容疑
(不法残留ほう助)で逮捕に踏み切った。
捜査関係者によると、男は2003年6月から約5年間、自分や会社名義で市内に借りた
マンションやアパート約50室を斡旋。不正に稼いだ仲介料は計250万円近くに上った。
男は昨年12月、名古屋地裁で執行猶予付きの有罪判決を言い渡され、刑が確定した。
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「外国人の友人から『住まいを紹介してほしい』と頼まれただけ。
金はもらったが、あくまで名義を貸した謝礼で、ボランティアのようなものだ」
2月上旬、取材に応じた男は、「彼らが違法なことをやっていると薄々は感じていた。
軽い気持ちで仲介したが、逮捕され、仕事にも支障が出た。後悔している」とも語り、肩を落とした。
また、「外国人の集まるレストランでは、安価でマンションなどの名義人を
引き受けるというチラシが、平然と配られている」と、違法ビジネスの一端を明かす。
さらに、在留許可の確認をしない不動産業者のもとには、口コミで不法滞在の外国人が
集まるといい、「住居のほか、車や携帯電話の名義を貸す日本人もいる」と語った。
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県警はこれまでもこうした日本人ブローカーを摘発。他人名義で登録した車をイラン人の
薬物密売人に転売したとして、07年夏に電磁的公正証書原本不実記録容疑などで逮捕
された同県清須市内の70歳代の男も、「イラン人にマンションの名義を貸していた」と供述したという。
住宅斡旋を巡っては、神奈川県警が昨秋以降、不法滞在の中国人を対象に組織的な
仲介ビジネスを行っていたとして、東京都内の会社役員を逮捕するなど組織の全容解明
を急いでいる。愛知県警幹部の1人は「愛知でも不法外国人に“拠点”を提供する組織が存在する。
こうしたブローカーらを摘発することが、犯罪の抑止にもつながる」と話し、摘発を強化する方針だ。
不法滞在者
愛知県警によると、県内では不法残留など入管難民法違反容疑の摘発件数が年々増加しており、
昨年は2336件に上った。国別ではフィリピン、中国、ベトナムが上位。法務省によると、
不法滞在者は今年1月現在、全国に約11万3000人いると推定されている。
ソース:読売新聞 (2009年3月15日)
http://chubu.yomiuri.co.jp/news_top/090315_1.htm http://chubu.yomiuri.co.jp/news_top/img/news090315_1.jpg