長崎県・対馬の海岸におびただしい量のごみが漂着している。ごみは拾っても拾っても流れ着く。
漂流漂着ごみの抜本的な解決を目指す立法化の作業がようやく本格化した。最前線にある対馬の
リアス式海岸を歩いた。
島の西側に小茂田浜という海水浴場がある。鎌倉時代に元と高麗軍が2度にわたり襲来した元寇
(げんこう)の激戦地として知られる。(
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700年以上を経た今、海を越えて襲ってくるのは大量のごみだ。
魚の養殖に使う発泡スチロール、ドラム缶、ロープや網、飲料のペットボトル、歯ブラシ、人形……。
海岸の清掃活動を続けている地元のNPO法人「対馬の底力」の長瀬勉代表(37)らと浜を歩いた。
あらゆるごみが散乱している。朝鮮半島までわずか50キロ。ハングルのラベルが目に付く。
ごみの8割は韓国、2割は中国から漂着するという。
危険なごみも多い。海水浴場の砂浜をかき分けると、わずか30分ほどで注射針が付いたままの
注射器や薬品が入っていたらしい小さな空き瓶が10個ほど見つかった。(
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硫酸の入ったポリタンクや薬品入りの瓶が漂着することも珍しくない。
「海水浴場なのに危なくてはだしになれない」。長瀬さんはそう言いながら、医療系のごみを持ち
帰り用の大きな瓶に詰めていった。
小茂田浜一帯は2007年11月、初めて同NPO法人が清掃した場所だ。その後も住民有志らが
何度も清掃しているが、数か月もすれば元に戻ってしまう。台風などで海が荒れた後は漂着する
ごみの量は特に多くなるという。
「珍しい光景があるんです」。長瀬さんに言われ、小茂田浜から南へ数キロの海岸に行くと
「発泡スチロールの山」が出現した。(
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大量の発泡スチロールが風で舞い上がり、山の樹木にひっかかっているのだ。高さ50メートル
あたりまで達している。V字形になった山すそは発泡スチロールの川となり、“上流” へと続いている。
島内の全町が合併して04年に誕生した対馬市によると、航空写真を分析した結果、島全体のごみ
漂着量は約4400トンと推計され、島が1年間に処理する一般廃棄物の3分の1に達する。
市の施設をフル稼働させて漂着ごみだけを処理しても70日以上かかるという。市環境衛生課の
阿比留忠明係長は「地元では処理できない量だ」と話す。回収したごみの処理費も01年度から
7年間で計約2800万円に上っており、市には重い財政負担だ。
人口約3万7000人で高齢者の多い島では、ごみを回収する人手も足りない。島は南北約82キロ、
東西約18キロだが、複雑な地形のため海岸線の総延長は900キロに及ぶ。ごみは東側にも回り
込み、ごみのない海岸はないという。船でないと到達できない場所もある。
ごみが漂着しているのは対馬だけではない。日本海側一帯は東北地方まで流れ着いている。
だが最前線にある対馬は、ごみの量も密度も日本一だ。対馬が防波堤となり本土へのごみを受け
止めているとも言える。
「島の宝は海。きれいな島を守りたい。子どものころは韓国や中国のごみなんて見たことなかった
けどなあ……」。長瀬さんは眼前に広がる大海原をじっと見つめた。(森太)
写真:(19日、長崎県対馬市で)=板山康成撮影
ソース:読売新聞(2009年2月27日16時04分)対馬にごみ襲来…ドラム缶や注射器、韓国などから
http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20090227-OYT1T00738.htm 関連写真:海岸線に漂着したドラム缶。ふたにはハングルの表記があった
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20090227-439104-1-N.jpg http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20090227-OYT1T00729.htm