フィリピンの労働関連法によると、労働者は、試用期間の六カ月間を過ぎると正規従業員と
みなされる。正規従業員は正当な理由がない限り解雇できない。だが、雇用が六カ月以内
なら、解雇されても退職金などの規定はない。
ただ、すべての派遣労働者が六カ月以内の契約で働いているわけではない。外資系大手飲料
メーカーで会計係として働くマリコール・カノノイさん(22)は、まず一年間の契約で
人材派遣会社から送り込まれ、さらに二カ月間延長された。
それでも彼女は新しい仕事を探している。法的には正規従業員になる資格を持っているはず
だが「何もはっきりしないから」という。よりよい条件を求めて転職を繰り返す文化も背景
にある。
解雇や契約などに不服がある労働者は、労働雇用省の労働関係委員会に調停を求めることが
できる。しかし、実際には手続きの煩雑さや日数がかかることなどを嫌い、訴え出ない例も
多い。次の仕事を探す方が先決だという事情もある。
その結果、派遣労働者の多くは一年単位の短い契約で働き、失業の際に退職金をもらえる
ならよい方だという。公的な雇用保険もない。失業者があふれ懸命に仕事を探し回っている
実態を見ると、労働者が法律で十分に守られているとはいい難い。
(マニラ・吉枝道生)
東京新聞 2009/02/18
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2009021802000077.html