準大手ゼネコン「西松建設」(東京都港区)が海外の裏金を税関を通さずに国内に持ち込んだ事件で、
東京地検特捜部は14日、同社元副社長・藤巻恵次容疑者(68)(現・顧問)ら4人を外国為替及び
外国貿易法(外為法)違反容疑で逮捕した。
同社が過去10年に東南アジアなどで捻出(ねんしゅつ)した裏金は総額約10億円。特捜部は今後、
裏金の使途を捜査するとともに、同社を巡る複数の不透明な資金ルートの解明を本格化させる方針だ。
特捜部は、裏金の一部が、タイで西松建設が工事を受注するための工作費に使われた可能性が
高いと見ている。関係者によると、バンコク都庁が2003年度に同社などの共同事業体(JV)に発注した
洪水対策トンネル工事に絡み、同社はJVを組んだ現地企業と共に4億数千万円を拠出。これがタイの
政府高官らに渡った疑いが浮上している。特捜部はタイの検察当局に不正競争防止法違反(外国
公務員への贈賄)容疑で捜査協力を要請したが、現地企業が関与しているため、当面は現地での
捜査の行方が焦点になりそうだ。
一方、特捜部は、西松建設がOBを代表にした二つの政治団体を隠れみのにして国会議員らに
行っていた献金についても捜査。これらは他人名義での献金や政党以外への企業献金を原則禁止
している政治資金規正法に違反する疑いがあるため、同社関係者から事情聴取を重ねている。
献金に使われていたのは、「新政治問題研究会」(1995年設立)と「未来産業研究会」(99年設立)。
両団体の会費は、同社が選んだ社員らが支払う形になっていたが、同社は年2回の賞与の際、会費分を
上乗せして補填(ほてん)。部長級や課長級などの役職に応じ、会費の額もランク分けしていた。
解散する06年末までに、両団体名義で行われた献金やパーティー券購入などは総額約4億7800万円
にのぼり、献金先には、民主党の小沢代表や自民党の尾身幸次元財務相の資金管理団体などが
含まれていた。
また、特捜部は昨年11月、西松建設の外為法違反事件の関連先として、政官界や電力業界に幅広い
人脈を持ち、特に原子力発電事業に強い影響力があるとされる都内の元会社役員の関係先を捜索した。
このうち、都内の支店が捜索を受けた警備会社(本社・青森県六ヶ所村)に、西松建設は多額の融資を
していた。この警備会社は、日本原燃(同村)から使用済み核燃料再処理施設の警備業務を請け負う
などしている。
このほか、特捜部は昨年12月、福島県の地元建設会社も捜索したが、この建設会社も西松建設から
融資を受けていた。
(2009年1月15日03時09分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090114-OYT1T01036.htm?from=navr