【国内】姜尚中氏「日本の雇用崩壊は、“日本の若者の在日化”だ」「中高年を失業させないために、若者にしわ寄せが行っている」[1/3]

このエントリーをはてなブックマークに追加
1諸君、帰ってきたで?φ ★
(東京新聞 1/3 新春対談 姜尚中氏と雨宮処凛氏の対談から抜粋。全文は東京新聞でご確認下さい)

雨宮: 昨年6月ごろから自動車関係などで派遣労働者が数百人単位で切られ始めました。今は派遣会社に来る仕事自体も
急減し、製造業の派遣を切られた人が日雇い派遣に流れ、少ない仕事を奪い合っている。住む場所をなくした人でネットカフェが
満員とか、日本人フリーターが日系ブラジル人労働者より安い給料で働いているという話も聞きます。

姜: 僕はずっと前から「日本の若者の在日化」と言ってきましたが、今の状況を雨宮さんはもっとラジカルに「難民化」と言って
いますね。僕は2005年に移民暴動があったフランスのシテを取材して驚きました。失業率が40〜50%。みんなフランス語しか
しゃべれないのに、肌の色がちょっと違うだけで職がない。犬猫扱いで、ゲットー(強制収容所)のようだった。人種問題や移民
問題として語られていますが、早晩、日本も近い状況になってくるのでは?

雨宮: プレカリアートも今はまだ、親が働いていたり、親の貯金や年金でやっていける層がある。でも10年後、親が死んだり
病気になれば、大量に野宿者となり、そういう場所をつくり出すかもしれない。実際、ネットカフェなどに何日も滞在し、所持金
10円ぐらいで逮捕されるケースが相次いでいます。

(中略)

雨宮: 派遣同士で結婚して家族を持つ人もいます。「託児所あり」の求人広告もある。でも料金が高く、働いてもマイナスになる。
そういう中で虐待も起きている。3ヶ月ごとに働き先を移り、夜勤、日勤を繰り返す生活で、お金もたまらない。夜中に泣かれ、
虐待し、殺してしまったケースもある。住民票を移していないから、地域の機関や行政もかかわれない。いずれは子どもを学校に
行かせることも問題になる。

姜: ワイドショーをにぎわす虐待事件は氷山の一角。「母性が失われた」と責める傾向があるが、貧困の問題が大きい。

雨宮: そうですね。一番の原因は貧困、経済的問題です。

姜: 僕は1970年代後半にヨーロッパに二年ほどいたのですが、当時のイタリアやドイツが今の日本に近い感じがする。中高年を
失業させないために、それまでもてはやされていた若者に、どーんとしわ寄せが行った。一方、当時の日本は若者が消費の王様
だった。それがバブル崩壊後、IT化が進み日本の高卒、大卒以上のスキルをインドに丸投げできるようになった。資本や国にとって、
若者は何の富ももたらさない「余計者」、「お荷物」という見方が支配的になってしまった。

雨宮: 最近は中国やインド、タイに日本のフリーターが派遣されています。時給300円、渡航費もビザも自腹で、着いた瞬間に
借金を背負う。月収5万円、家賃や光熱費やらで月に5万8000円ほどかかり、働けば働くほど借金が増える。現地採用すると教育
が必要だから、日本で「海外で働けます」「中国語が学べます」と宣伝し、行き場がないフリーターは「スキルが磨けるかも」と
飛びつく。実際は現地の中国語授業は週1回で、1年以内にやめると罰金5万円。ひどい現実です。(中略)日本でも使い捨てられて
いる人が、海外でもだまされる。

姜: 日本の人口1億2000万人のうち、多くの人が考えているのは、まず高齢者をどうするか。そこで、代替可能な単純労働をする
若者が高齢化すると、社会的コストと富が垂れ流されるだけだという発想をする人がいる。「余計者」としての若者をどうするかと。
話は飛びますが、1959年から80年代に、10万人近くの在日が北朝鮮に帰国した。最新の史料によると、そこには余剰人口で生産性
に貢献しない犯罪者予備軍を外に出そうという考えがあった。いつの時代も、お国を上から見ている人は同じ発想をするんです。

雨宮: いらない人間は出て行けと。

姜: それも「若者の在日化」の一つかと。僕は79年ごろ日本に帰ってきたけど、在日は住宅ローンも組めず、公団住宅にも
入れなかった。解禁されたのは80年代でした。

(以下略)

ソース(東京新聞 1/3付 10面〜11面)