【韓国経済】為替投機勢力との戦い、長期戦の覚悟を[10/05]

このエントリーをはてなブックマークに追加
1戸締りφ ★
 危機に直面した際の解決役はやはり政府だけだ。米国発の金融危機は韓国政府がベンチを
飛び出し、選手としてプレーすることを求めた。通常は監督や審判の役割をしている政府が
国家代表のユニホームを着て、金融システム防衛に向けてリングに上がった。今われわれは、
はらはらした心情で政府が勝どきを上げるのを待っている。
 姜万洙(カン・マンス)企画財政部長官が指揮する政府経済チームは序盤から積極攻勢に
出た。ドル資金を供給し、さまざまな対策を打ち出し、市場の不確実性を早期に払しょくしよう
と努めた。各地で繰り広げられる局地戦で政府は機先を制することに成功した。ロシアから
帰国した李明博(イ・ミョンバク)大統領の口からは、先制的によく対応したという称賛の言葉
も聞かれた。
 ところが、序盤から実弾の消耗が激しい。最後の堡塁(ほるい)として積み上げた外貨準備
が徐々に減っている。政府は序盤に実弾を浴びせ、短期戦で決着を図るつもりだったように
みえる。姜長官は「必要なだけ外貨準備を投入する」とも述べた。いくらでもドル資金を供給
するから安心してほしいというメッセージだった。
 しかし、こうした作戦はかえって市場の不安を招く逆効果を招いている。当面のドル資金需要
は改善されるかもしれないが、その分外貨準備高が減少することを市場は見抜いているからだ。
政府がドルを供給しても、ウォン相場は一時的に反発するだけで、翌日にはさらに下落を繰り
返している。危機が短期戦で終わらないことを市場も本能的に知っているのだ。
 今まさに進行しているのは長い「信用戦争」の序幕にすぎない。真に恐ろしい相手はまだ姿
すら現していない。政府が真剣勝負をしなければならない敵は、韓国の外貨準備の弱点を
虎視眈々(たんたん)と狙っている国際的な為替投機勢力だ。いつやってくるか分からない
為替投機勢力との一戦に備え、実弾を備蓄し、節約しなければならないのに、政府のドル資金の
金遣いは荒い。

 為替投機勢力はハイエナのような存在だ。弱い相手だけを狙い、いったん攻撃すればその国
の外国為替システムを焦土化させる。不幸にも韓国は彼らの餌食になるのに近い条件を備えて
いる。政府の為替防衛能力は十分ではないと疑われている。防衛能力が限界に近づいたと
判断した瞬間、為替投機勢力は一斉に攻撃を開始する可能性が高い。

 為替投機勢力は恐るべき火力を備えている。1992年から93年にかけての欧州通貨危機では、
英国、フランス、イタリアのような先進国も彼らの攻撃にお手上げだった。最善の戦略は攻撃
自体を放棄させることで、そうするためには韓国が弱点を見せてはならない。既に為替投機
勢力との水面下の神経戦が始まっている。

 政府が保有する外貨の実弾は決して少なくはない。韓国の外貨準備高は世界6位だ。
普段ならば外貨準備高は2400億ドル(約25兆2800億円)で十分だ。しかし、現在は平常時の
計算は通じない。国際市場からのドル調達が断たれた状態で、国全体が外貨準備という唯一の
命綱に依存しているからだ。

 市場関係者は政府が外貨準備をどれだけ使ったかをチェックするため、毎日のように計算機を
たたいている。政府が市場介入を行うたびに、何十億ドル使ったという計算がすぐに出る。
政府は隠そうとしても隠せない。政府は財布を開けた状態でポーカーゲームをしているような
ものだ。

 市場では「外貨準備高の逆説」が生まれた。政府がドル資金を放出することが好材料であると
同時に悪材料にもなる。市場は政府がドル資金不足を解消してくれることに喜びながら、一方では
不安視している。時間がたてばたつほど、「目先の喜び」より「未来の不安」のほうが大きくなる。

 終わりが見えない金融の冬。政府は長期戦を覚悟すべきだ。外貨を放出しなければ、為替レート
の上昇とドル資金の枯渇で大きな苦しみを生む。しかし、為替投機勢力との一戦を考えると当面
の苦痛は耐えざるを得ない。耐えて、そして節約して、この不吉な酷寒期をしのぎ切らなければ
ならない。

朴正薫(パク・ジョンフン)経済部長 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
(上)http://www.chosunonline.com/article/20081005000022
(下)http://www.chosunonline.com/article/20081005000023