バナ株式会社の石山久男社長(60)の説明は、熱を帯びていた。その口調は、「おもいっきりイイ!!テレビ」のみのもんたに
そっくりだ。いかにも説得力があるように聞こえ、聴衆を笑わせるツボも心得ている。(中略)
9月上旬に開かれた説明会でのことだ。場所は富士山の麓、富士吉田市にあるバナの敷地内。プレハブ建ての大部屋に
詰め込まれた200人の参加者は、石山社長の説明に聞き入り、その都度、驚きの声を上げたり、ため息をついたりした。
そのほとんどが、50代から70代の男女である。
(中略)
CMで、バナHを記憶の方もいることだろう。全国エリアでは、テレビ朝日系の「徹子の部屋」や「ワイド!スクランブル」でCMが
流れている。滝をバックに、韓国の人気女優チェ・ジウが商品を手に微笑んでいる映像だ。羽振りがよくなったのか、同社は
石川遼君の出場でも注目を集めたバナH杯KBCオーガスタゴルフトーナメント(今年8月末)の冠スポンサーにもなっている。
同社は、ここ数年で急成長した会社である。01年11月に設立されたが、ある信用調査会社によれば、04年の売上高が9000万円で
05年2億円、06年4億5000万円。それが去年には26億円を超えている。
資本金は設立当初5000万円で、株主は石山社長が990株、チェ・ジウが10株。現在は、4億5000万円まで増資しているが、
事情通によれば、「石山社長は、以前に北海道でリゾート開発を手掛けたが失敗。業者に発注したミネラルウォーターを台湾に
輸出していたこともあり、自身で本格的に水ビジネスを手掛けるようになった」
バナHの売りは、天然水素(H)が含まれていることだ。ペットボトルのラベルには、「厚さ1000mにも及ぶ富士山の玄武岩層が
生んだ天然水素水です」とあり、製造時の溶存水素量3.0ppb(1ppbは1リットルの水に0.001ミリグラムの物質が溶けている状態)で、
採水地は富士吉田市富士山1合目と記されている。もっとも、ボトルや同社のHPでも、水素が含まれていることの効能には一切
触れていない。(中略)
これが社長の説明になると、万病に効く特効薬。ガンについては先述したが、「悪玉コレステロールから過剰な活性酸素が発生し、
血液が汚れて病気になる。一度付いた悪玉コレステロールそのものを溶かす薬はないが、天然水素水が悪玉コレステロールを
落とす。2リットルを朝から晩まで10回に分けて飲む。早い方なら2ヶ月、遅い方なら3ヶ月で100%溶けています」
以下、リウマチ、通風、糖尿病、腎臓病からアトピー、水虫まで、「100%治る」と言い切るのだ。
(中略)
循環資源研究所の村田徳治所長は断言する。
「3.0ppbと言えば、1リットルの水の中に0.003ミリグラム。こんな少量の水素がどうして生体の中で劇的な力を持つのかわからない。
水素が活性酸素を取り除く仕組みとして、彼らは水素が活性酸素とくっ付いて、水(H2O)となるよう化学反応させると主張している。
水素量2に対して活性酸素1しか取り除けないということ。しかし体内に発生する活性酸素は1日に約4〜5グラムと言われているから、
毎日取り除くためにはドラム缶10本くらい飲まないと意味がないことになる」
そもそも天然水に原子状の水素が含まれていること自体が疑問、と科学ジャーナリストの佐川峻氏は語る。
「水は水素2と酸素1が結び付いたもので、特に水素が多く含まれているということは本来ないはず。原子水素Hは、自然界に単体で
存在することは通常ありません。ましては水の中に水素原子が単体で存在することはまずありえない」
(中略)
数々の疑問に対して、バナでは「社長は忙しい」の一点張りで答えようとしないが、専門家に聞けば聞くほど怪しい水素水なのである。
厚労省の警告。
「特定の商品について承認されていない効能を謳う行為は、それが文書でも口頭でも薬事法68条に抵触する恐れがあります」
(以下略。かなりばっさり中略してますので、全文は「週刊新潮」でどうぞ)
ソース(週刊新潮 10/2号 143〜145ページ)
(参考)チェ・ジウの「バナH」のCM動画(YouTube)
http://www.youtube.com/watch?v=2N5AT43Ls04