北朝鮮が福田康夫首相辞任表明に“ショック”を受けている。北朝鮮は9日に金正日体制の
威信をかけた行事、建国60周年記念日を控えているが、福田政権による対北経済制裁解除を
政治的成果に見込んでいた。制裁解除を前提に平壌行きを予定していた朝鮮総連の幹部もいたが、
辞任表明で対日関係改善はすべて雲散霧消した形だ。無能力化を中止、核施設の原状復旧作業を
開始して対米圧力も強化しており、日朝、米朝関係は一気に冷え込む見込みだ。(久保田るり子)
建国60周年は、年初の3紙共同社説(党機関誌「労働新聞」、人民軍機関紙「朝鮮人民軍」、
青年組織機関紙「青年前衛」)で「歴史に刻まれる転換の年」と位置づけられていた。
北朝鮮筋によると、転換とは「日朝交渉の進展」と「米国のテロ支援国家指定解除」を指し、
日朝交渉で決まった拉致問題再調査との引き換えの日本の制裁解除について北朝鮮側は
「祝典の前に日本がわれわれに屈服」と評価する段取りだったのだという。
日朝実務協議は今年6月、9カ月ぶりに始まり、拉致問題再調査で合意した。6月協議は
玉虫色の合意内容で世論が反発、8月の再協議となった。8月合意では北朝鮮が
重視しているとみられた日朝間を往来する北朝鮮の船「万景峰号」解除は含まれなかったが、
北朝鮮は「交渉は成功」と評価していた。これは一部制裁解除でも建国記念日の祝典の
「成果」とする予定だったためという。
拉致再調査の委員会の内容をめぐって日本政府内の意見調整が手間取っていたこともあり、
北朝鮮側は8月末までに委員会を始動しなかったため、結局は交渉の土台だった福田政権が
崩壊した格好。北朝鮮は対話路線の福田政権に「期待」をかけていただけに、辞任表明には
日本の“親北陣営”からも「福田政権を惜しむ声」が上がっている。
核計画の検証問題から「米国のテロ支援国家指定解除」は凍結、施設復旧を開始して
対抗措置に出た。日朝も棚上げとなって「建国記念日の目玉がなくなった」(日朝関係者)。
「メンツをつぶされた」(同)北朝鮮のさらなる強硬路線が予測されている。
現在、北朝鮮では「建国60周年記念行事」の準備が着々と進められている。
朝鮮中央通信によると、全国で故金日成主席と故金正淑夫人、金正日総書記の
「3大将軍」の「領導の跡」をたたえる工場建設や壁画など偶像物が製作され、
平壌市内では建造物の改装、看板の掛け替え、ネオンサインの取り付け作業などが
進んでいるという。9日には金正日総書記が出席する閲兵式が開催される可能性が高い。
http://sankei.jp.msn.com/world/korea/080904/kor0809041705004-n2.htm