【正論】日本大学教授・百地章 外国人参政権問題に決着を
≪参政権付与は憲法違反≫
4月20日の李明博・韓国大統領の来日を機に、外国人参政権問題が急浮上するので
はないかと心配していたが、取り敢えずは杞憂に終わった。
同大統領は就任前後からわが国の与野党幹部に対して「在日同胞への参政権付与」
を要請しており、民主党では先日(4月9日)、岡田克也元代表らが在日韓国人ら永住者に
地方選挙権を付与するための「提言骨子案」をまとめている。しかし、これは参政権の
本質がまったく分かっていない証拠である。
日本国憲法は、参政権を「国民固有の権利」(第15条1項)としており、権利の性質上、
国民のみが有し、外国人には認められない権利の典型が参政権である。だから最高裁も、
外国人への参政権付与を憲法違反とした。このことは、判決が「〔参政権を保障した〕
憲法15条1項の規定は、権利の性質上日本国民のみをその対象とし、右規定による
権利の保障は、我が国に在留する外国人には及ばない」「〔地方選挙権が『住民』に
あると定めた〕憲法93条2項にいう『住民』とは、地方公共団体の区域内に住所を有する
日本国民を意味するものと解するのが相当」(平成7年2月28日判決)としたことから
明らかであろう。
国の運命に責任を持たない外国人には、たとえ地方選挙権であれ付与することはでき
ないのであって、納税など、参政権付与の根拠とはなりえないわけである。
≪「届け出制」の国籍取得?≫
幸い自民党内では、外国人参政権に対して反対論や慎重論が有力であり、これが一挙に
現実化する危険はなさそうである。しかし、同党のプロジェクト・チーム(河野太郎座長)
で進められている「特別永住者」への「届け出制」による日本国籍付与(届け出れば
無条件で国籍付与を認める)法案については、警戒を要する。
特別永住者とは、戦前に「日本国民」として「内地」に移住し、戦後自らの意思で日本に
とどまった人々とその子孫である。平成18年末現在、その数は44・3万人、うち43・9
万人が在日韓国・朝鮮人である。一般永住者を含む永住者全体(83・8万人)の中、
特別永住者は53%を占め、しかも参政権取得に熱心なのが在日韓国人(民団)である。
そのため、外国人参政権問題は在日韓国人問題であるといわれる。そこで問題解決の
一方策として考えられたのが、特別永住者の帰化促進ということであった。
法案では、この人々については国籍法に定める帰化条件によらず、「届け出」だけで
日本国籍が取得できることとされている。しかし、帰化促進のためとはいえ、これは「国籍」
の持つ重み(ディグニティ)を無視したものといえよう。
アメリカ合衆国では、国籍の取得に当たって憲法の擁護、旧母国に対する忠誠の放棄、
それに国のため武器を取ることなどの「忠誠宣誓」を行わせているが(移民及び国籍法)、
わが国では、帰化申請の際に問われるのは、滞在年数、年齢、犯罪歴の有無等で
あって(国籍法)、「どうして日本人になりたいのか」さえ聞かれないという。まさに「日本人
になりたければどうぞ!」と言わんばかりで、クレジット・カードへの加入と変わらない−。
昨年日本に帰化した評論家・石平氏はこう慨嘆しているが(『月刊日本』平成20年2月号)、
これがわが国の帰化制度の実態である。
ソース:産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/080509/trd0805090211000-n1.htm >>2-5あたりに続く