両岸直航が実現したら・・・ 香港メディア「香港は沈む」と憂慮
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総統選挙の当選者である馬英九が、就任後できるだけ速やかに両岸三通(*1)を開放すると
宣言したが、香港の世論がこれに対して高い関心を寄せている。
中でも三通によって、香港の持つ役割が著しく減らされ、香港経済に打撃を与えるのではないかと
心配する声が高まっており、ある香港メディアは「両岸直航で香港は沈む」という
特大の文字の見出しで指摘した。
香港政府は、イギリス植民地政権末期から両岸直航が香港経済に与える影響を
想定し始めていたが、その結論は極めて大雑把なもので、その結論も
「短期的には影響をもたらすが、長期的には両岸四地(*2)が拡大することで、
香港経済もずっと恩恵を受けることができるだろう」といったたぐいのものだった。
今回の台湾の総統選挙の前になって、一部部門がようやく再評価に着手した。
香港貿易発展局が管轄する物流発展諮問委員会が先週召集され、
両岸三通が香港の物流業に与える影響を評価した。
その結果は、一部の業界にとって心配でたまらないものとなった。
香港コンテナ運輸業職工会の謝浪・副主席は、次のように見込んでいるという。
「三通は、香港でのコンテナ処理量を5%減少させるだろう。
昨年香港から台湾に輸出された空輸貨物は約24,500トン、
香港が台湾から輸入した空輸貨物は約165,400トンにもおよんでいた。
わずかにアメリカに劣るだけで取扱い重量が世界2位の香港だが、
その大部分は大陸を起点とするか目的地としているので、
三通は香港のコンテナ輸送にたいへん重大な負の影響を与えるだろう」
また香港空港管理局も、現在台北から香港にやってくる就航便のうち
大陸に向けて乗り換える客が約1割いことから、
両岸直航が行われた後は、台湾の旅行客の1割を失うことになるだろうと語った。
航空会社は今後、ダイヤ削減や割引による集客に努める必要があるかもしれないとも語っている。
実際に、多くの証券会社が台湾の選挙前に既に両岸直航開始時の輸送業への影響を
見積もっている。その中で、野村国際と匯豊は、台湾−香港路線の旅客の約6割が
香港を単なる中継点として利用していることから、同路線に就航している航空会社のうち、
キャセイパシフィックは70万人、マカオ便と合わせると120万人分の影響があると見積もっている。
近年、香港・マカオに行ったり、中国への乗り換えのために香港・マカオを利用したりする
台湾旅行客は440万人にのぼり、ある専門家は、直航便が就航すれば、
香港・マカオへの利用者は260万人にまで激減すると予測している。
キャセイパシフィック傘下の香港ドラゴン航空は、大陸への便をメインにしていることから、
両岸直航が最も大きな影響を与えるのはキャセイパシフィックと香港ドラゴンだと見られている。
しかし、匯豊では、香港ドラゴンは多量の貨物取扱量があることなどから、
航空路線の組み合わせの改変によって、一部の影響は相殺されるのではないかと見ている。
ある論評によると、台湾および大陸の製品が香港を経由して行われている貿易金額は、
昨年1月から11月までで221億ドルとも言われ、香港に莫大な富をもたらしている。
これらの収入は三通の導入後、間違いなく大きな影響を受けることになるだろう。
★ ソースは、聯合報 [台湾] とかから訳。
http://www.udn.com/2008/3/25/NEWS/WORLD/WOR1/4272158.shtml (中国語・繁体字)
★ 訳註。
(*1) 台湾と中国との直接的な「通商(ビジネス)」「通郵(通信)」「通航(直航便)」の3つを開放することを指す。
(*2) 中国大陸・台湾・香港・マカオのこと。
★ 関連記事。
三通で香港が憂鬱
http://www.naruhodo.com.tw/news/search.php?page_num=0&no=6362 (な〜るほど・ザ・台湾)