東ティモール 安定になお国際的支援が必要だ(2月24日付・読売社説)
インドネシアから独立して6年近くを経たが、東ティモールは、依然として安定にはほど遠い。
まだまだ、国際社会の支援が必要だ。
先のホルタ大統領とグスマン首相に対する襲撃事件は、東ティモールの混乱を象徴するものだ。
直後にアラウジョ国会議長が大統領代行となり、無事だった首相は直ちに執務を再開し、
重傷を負った大統領は豪州ダーウィンの病院で手術を受け、快方に向かっている。
首都ディリはじめ国内は今のところ平穏で、大きな騒乱は起きていないが、いつ再燃してもおかしくはない。
そうなれば、独立時には国連平和維持活動(PKO)の成功例とされた東ティモールだが、「破たん国家」になりかねない。
東ティモールでは、今回の事件で射殺されたラインハド元少佐らが06年に軍内での差別待遇の
改善を訴えて反乱を起こし、軍部隊と衝突した。これを契機に混乱は一般社会にも飛び火し、
商店や民家なども相次いで焼き払われる大規模な騒乱に発展した。
ポルトガルの植民地時代から続いているといわれる、東部地域の出身者が西部地域の出身者よりも
重用されている、との不満が、一般社会にまで拡大した例と指摘されている。
グスマン氏らは昨年6月の議会選挙を前に、強権政治と批判を浴びた最大政党・東ティモール
独立革命戦線(フレティリン)とたもとを分かち、新政党・東ティモール再建国民会議を結成した。
議会選を通じてフレティリンを排除した連立政権を樹立し、フレティリンは野党に転落した。
こうした政治的な状況への不満が襲撃事件の背後にあるとの見方もある。
今回の反乱兵士約20人は逃亡しており、不安要因となっている。
治安維持や警察官の訓練を担う「国連東ティモール統合支援団(UNMIT)」は今月下旬で任務を終了するが、
国連安全保障理事会は近くUNMITの派遣延長を決める。
5万人以上が今も難民生活を余儀なくされている状況だけに、国際社会が引き続き東ティモールの国造りに
積極的に関与して行く意思を示すのは当然だ。日本も今月まで1年間にわたり派遣した延べ4人の文民警察官に続き、
新たに要員を派遣する必要がある。
自給自足の農業が主体で、主要な産業が少ない中、ティモール海での豪州と共同開発の石油・天然ガスの
採掘が軌道に乗っているのは明るい材料だ。社会安定のためには経済発展が必要だが、課題は人材や
技術の不足にある。日本も豪州などと協力し、積極的に支援すべきだ。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080223-OYT1T00678.htm