人民元上昇でも米議会はまだ不満、ゴールドマンは7.5%の元高を予想
7月9日(ブルームバーグ):中国の人民元は2005年のドル・ペッグ(連動)制廃止以降で最も速い
ペースで上昇しているが、米議会はまだ満足していない。
元は4−6月(第2四半期)に1.5%上昇した。食品や賃貸料、輸送費などの価格上昇率は過去2年
3カ月で最高となっている。ゴールドマン・サックス・グループやJPモルガン・チェースは、米国2番目
の貿易相手国である中国がインフレの影響で、今後1年で少なくとも7.5%の元高容認を余儀なくされ
ると予想した。これは2006年の上昇率の2倍強。
ただ、予想通り上昇したとしても、米最大の貿易相手国カナダの通貨上昇率(11%)に比べると見劣り
する。元高は中国の貿易黒字縮小に効果をみせておらず、為替相場を利用して輸出競争力を高めて
いる国からの輸入品に対して米議会は新たな関税導入を計画している。
通貨操作への対抗を目指した法案を提出した4議員の1人、上院財政委員会のマックス・ボーカス
委員長(民主、モンタナ州)は「中国のインフレは、元の上昇が必要になるもう1つのサインだ。国内
経済に悪影響を与えかねないためだ」と指摘。「中国にとって改革の先送りは危険だ」との見解を示
した。
中国国営新華社通信は先週、1−6月期の同国の貿易黒字が60%強拡大し、 1100億ドルに達した
可能性があると報じた。06年通期の貿易黒字は1775億ドル。
インフレ加速
5月の中国のインフレ率は3.4%と、中国人民銀行の目標である3%を3カ月連続で上回った。人民銀
が6月29日に公表した見通しによると、07年の消費者物価上昇率は3.2%となり、04年以降で最高とな
る見込み。
元は先週、対ドルで0.15%上昇し、1ドル=7.6037元。05年7月のペッグ制廃止以降では8.9%上昇した
水準。人民銀は元の1日当たりの変動幅を上下0.5%まで容認している。
元の上昇は輸入価格を押し下げるとともに、輸出の鈍化につながる。世界銀行によると、中国経済に
占める輸出の割合は38%。米国の対中貿易赤字は今年4月までに前年同期比で18.5%増の763億
ドルに達した。昨年の対中貿易赤字は2325億ドルと、05年の2015億ドルを上回り過去最大を記録した。
ゴールドマンの予測
ゴールドマンのストラテジストらは、人民元が今後1年間で7.5%上昇すると予想。JPモルガンは来年
3月までに元が10.6%上昇するとみている。JPモルガンのグローバル通貨ストラテジスト、レベッカ・パタ
ーソン氏は「インフレは引き続きかなり高水準で推移し続けるだろう。食品価格はその最新の兆候だ」と
指摘した。
政府統計によると、5月の食品価格は前年同月比8.3%上昇した。豚肉などの肉製品は26.5%上昇。卵は37%、
植物油は21%、家賃は3.2%、輸送費は3.9%それぞれ上昇した。
人民銀は今年、2回利上げを実施しており、1年物貸出金利は現在6.57%。ゴールドマンのストラテジストらは、
人民銀が0.27ポイントずつ2回の追加利上げを行うと予想している。
ソース:Bloomberg.co.jp
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003009&sid=ayF1o1Fss8AI&refer=jp_top_world_news