【日本/台湾】 李登輝氏と「仲間」たち〜李登輝氏は一人ではない、台湾には無数の李登輝氏がいる [06/06]

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1Mimirφφ ★
【地球随感】李登輝氏と「仲間」たち

06/06 15:08
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/china/55663/

 李登輝(り・とうき)氏(84)の「奥の細道」をたどる旅が順調に進んでいる。李氏夫妻の行くところ、
至るところに笑顔が広がる。李氏夫妻はもとより、夫妻を迎えた多くの日本人たちが喜んでいる。
李氏訪日に反対する内外の勢力は、この笑顔の波がもつ意味をどう分析するのだろう。

 李登輝氏の訪日は、2001年4月、04年暮れから正月、そして今回と3回目になる。だが、この間の
日本政府の対応の変化には目を見張るものがある。

 1回目のときは、心臓病の治療目的と厳しく限定し、行動範囲まで外務省が口をはさんだ。
講演も記者会見もダメ。言論、行動の自由はなかった。

 2回目は観光目的ならと条件を緩めたが、政治家との面会、記者会見、講演の3つはノー。
東京立ち寄りも不可だった。

 そして、今回の3回目。「政治活動はしない」という了解はあるもようだが、行動や言論の自由は大幅に
認められた。講演も記者会見も、東京への立ち寄りも、当然のこととはいえ、みな認められた。なぜか。

■首相の強い意向
 李登輝氏訪日は、1回目以来、中国の猛反対のため、問題の扱いは外務省を超え、いわゆる「官邸マター」
となった。首相官邸が判断を下す問題だ。つまり、李登輝氏の今回の訪日がほぼ自由となったのは、
安倍晋三首相(52)の強い意向、判断が働いたからにほかならない。

 李氏が、実兄のまつられている靖国神社への参拝の希望を口にしたことについても、安倍首相は記者団に、
「私人として当然信仰の自由がある。日本は自由な国だ」と答えたが、首相の強い意向がうかがえる。

 安倍首相にしてみれば、李登輝氏の訪日は歓迎すべきことで、日本が自由の国であることを示す好機と
とらえたのではないか。中国の干渉にうろたえることなく、逆にこちらから中国に対し、李登輝カードを使った
ともいえる。

 そのカードは、中国が李登輝訪日とその言動に批判を強めれば強めるほど、日本における対中批判が
高まるという力を持っている。

■日本人は胸を張れ
 李登輝氏の訪日に先立って、『愛する日本の孫たちへ』(桜の花出版)という本が出版された。
副題に「かつて日本人だった台湾日本語族の証言集1」とある。女性ライターの猪股るー氏が、
李登輝氏と同じ台湾の日本語世代の人たち11人から、戦前の日本統治、戦後の国民党支配、
日本への思いなどを4年間かけて聞き取り、一人称形式でまとめた証言集だ。

 11人はそれぞれ、波瀾(はらん)万丈の人生を持つが、共通しているのは、戦前の日本や日本人が
台湾に残した精神的価値に対する高い評価だ。もちろん、当時の日本人による台湾人への差別や不当な
扱いなど、問題点は率直に語る。だが、評価すべき点の方が多く、日本人はむしろ胸を張れ、と叱咤(しった)
する。

 本書は、台湾には李登輝氏は一人ではない、と思わせてくれる。台湾には無数の李登輝氏がいる、と。
李登輝氏の「仲間」たちであり、同じ思いを持つ「同思」の人たちだ。

 この本を企画し、インタビューをセットした福岡の台湾研究会事務局長、永嶋直之さんによれば、
「みなさん、本書を持参すると涙を流して喜んでくれた。第2集にも取り組む」という。
過酷な歴史を生き抜いた台湾の日本語世代の人たちが語る生の証言集の持つ力は大きい。

 李登輝氏は明日7日、東京のホテルで、「2007年以降の世界情勢」と題して、来日3回目の講演を行う。
(論説副委員長 矢島誠司)