【エネルギー】春暁ガス田=東シナ海で中国が開発を進める、日本からは遠くとても小さいガス田 「大事な資源」とは言えまい[03/02]
ひとり歩きする自主開発目標
私なりに調べてみて驚いた。
「何度かこの数値目標の根拠を伺ったんですけれども、どうも明確でない。数値目標は、まずひとり
歩きする数値になる。もし、その数値について説得性があるならば、軸の振れない対策実施の明確な
根拠になると思うんですけれども、どうも説得性のある説明を伺えない……」
総合エネルギー調査会総合部会の06年5月の第5回会合の議事録に、内藤正久委員のこんな発言が
残っていた。氏は通産省の中枢を歩んだ後、伊藤忠商事副会長などを経て、現在、日本エネルギー経
済研究所理事長という、いわば日本のエネルギー問題の「知」の最高峰だ。その内藤氏がこんな指摘
をしていたとは。
最近のイラン・アザデガン油田問題や「サハリン2」騒動をめぐる解説記事の多くは、「40%」に照
らして日本のエネルギー戦略が危うい、といった論理構成になっている。内藤氏が懸念したように
「40%」などの数値目標が、その「根拠」を問われることなく歩き出している。それどころか、
日本がとにかく達成すべき値としてすでに描かれていないか。
違和感を覚えるのは、90年代末、一部新聞で「石油公団廃止」論がブームとなった時とのギャップ
もある。私もそのころ通産省の記者クラブに詰めていたが、一部の記者は当時の堀内光雄通産相の
「告発」を受け、公団廃止論を強力に展開した。いまとは正反対だ。それだけに、現在の前線記者には
「そのまま突っ走って、大丈夫?」と問いかけたくなってしまう。
昨今、「サハリン2」問題などでお騒がせのロシアも、「エネルギー帝国主義」や「国家管理強化」と
いったレッテルを張るだけで、「おしまい」にしていないだろうか。ロシアが抱えている技術面などの
「弱み」まで突いてこそ、日本の資源外交のあり方を提案できるはずだが。
ちなみにAAN客員研究員の伊藤庄一・環日本海経済研究所研究員は2月5日付の朝日新聞朝刊で、
国家管理強化といったレッテルについて皮肉っぽく「これこそロシアが欲しかったもの」と指摘して
いる。そう、実はこわもてを取りつくろう、としている相手に向かって、「おまえは強いな」と、「戦う」
前からびくついていては、「勝負」はもうついている。
今後もエネルギー資源をめぐる議論はますます熱くなるだろう。だからこそ、この問題を伝える私た
ちは、冷静に情勢を見抜き、分析できる「目」力を磨かなければ、と思う。
◇
今回は、月刊誌「エネルギーフォーラム」3月号への寄稿文を、同誌編集部の了解をいただき、転載さ
せていただきました。同誌のご理解に深く感謝申し上げます。なお、アジアのエネルギー情勢の
「いま」を考えたい、と昨年から続けてきましたこのコーナーは、今回をもちましていったん終了
させていただきます。ご愛読、ありがとうございました。 (終わり)