>>1の続き
MASのおかしい点は、5月26日時点で、同日までに代金を振り込むようにという通知が
ツアー参加希望者に一斉に出されていることだ。そして、5月30日のツアーキャンセルの発表である。
6月1日に「2日午前、約500人分のチケットを入手できる可能性がある」と発表し、
2日には「148枚を確保できたので差額を支払えば発売できる」と内容が変わり、
5日の返済不可能発表となった。
6月5日以来、電話は繋がらず、MASのサイト(http: //maxairjp.com/)からは次々と情報が削除され、
会社概要まで消えてしまった。6月4日には被害者のブログも設置されることになったが、
MASと中国国際体育旅游公司の両方を追及する必要がある。
また、MASは北朝鮮ツアーを開催していることにも触れておかなければならない。
つまり、北朝鮮や中国と特別なパイプのある特殊な旅行社であるということだ。
北朝鮮ツアーそのものを悪いとは言わない。日本人の間でも需要はあるだろうし、
その手続きを代行するのは旅行会社の業務の1つであるのは言うまでもない。
だが、同社の北朝鮮という国に関するホームページ上の記述はこうだ。
「この偉大な変革は、たぐいまれな指導者金日成主席と金正日書記のもと、
チュチェ思想に導かれた人民大衆の鉄の団結と、限りなき人民愛を基調とした革命的ロマンが
あってはじめてなしえたものである。指導者と党、そして人民大衆が一致団結した社会主義は
不滅であり、この不滅の社会主義祖国に朝鮮人民は、大いなる希望と幸福な未来を託している。」
国際社会から核や人権問題で非難を受け、拉致問題で日本中から批判を受けている北朝鮮
という国家とその指導者に対する、無条件のこの賛辞に違和感を覚える方は多いのではないだろうか。
中国のカントリーリスクが考慮された気配がない面と合わせて、本来、地域や社会に貢献すべき
企業としては、バランス感覚の危うさを感じるのは筆者だけではないだろう。
6月7日には、もっと悪質な「ワールドカップツアーズ」という幽霊会社の事件が報道されたが、
これもネット上で大問題となっていた。サイトには東京都中央区の住所が記されているが、
この住所に該当する会社は存在しない。電話も繋がらず、
「都によるとツアー代金を振り込んだなどの相談が数件寄せられている」と日刊スポーツが報じた。
しかもこのサイトのドメイン(※2)が取得されたのは、なんと今年の5月18日なのだ。
フランスからもフランス戦3試合のチケット計500枚以上が紛失したというニュースが
AP電で飛び込んできた。フランス・サッカー連盟からアルザス地方の地域リーグに宅配便で
送られる途中で行方不明になっているという。
8年前のフランス大会のチケット難民の姿が思い出されるが、異常事態が4年毎に繰り返されている
ということだ。需要が供給を大幅に上回る商品だけに、消費者は冷静かつ慎重にツアーを選択する以外、
現時点でこれといった対策がないのは何ともやるせない事実である。
※1デジタルディバイド
元々は、コンピュータなど電子機器で情報を得られる人と、テレビ、新聞など一般メディアでしか
情報を得られない人との格差を表す言葉。それが転じて、電子機器と一般メディアの情報格差
を指すようになった。
※2ドメイン
インターネット上のサイト(ホームページ)の住所を表す記号