■西村幸裕のW杯透視図
チケット問題の真相・・・巨大ビジネスW杯に群がる闇社会
ドイツ、マルタとの調整試合も終わって、日本代表はいよいよ初戦のオーストラリア戦に臨む。
開幕直前のムードも高まっているが、5月31日には旅行会社「マックスエアサービス」(以下MAS)
の観戦ツアーがチケットを用意できずキャンセルされたことが報道され、6月5日にはついに
「返金のめどは立っていない」と指田清一社長が記者会見で明らかにした。
MASのケースは問題が複合的になっている。まず、MASが中国の政府系企業
「中国国際体育旅游公司」(
http://www.chinacist.com/)にチケットを手配したことが問題だ。
中国企業と仕事をするカントリーリスクが考慮された形跡は見られない。
6月1日に同公社は「4月上旬にMASと価格交渉が折り合わなかったので、
4月18日に支払われていた金を返却する手続きをした」と記者会見で答えたが、
質問は受け付けなかった。質問を受け付けない方式が中国の常識であるのだが、
世界では非常識であるのは言うまでもない。その種の会見(と呼ぶに値しないが)で
真実が明らかにされるはずなどない。
さらに6月2日には、中国の環球時報が「ビジネス上のトラブルに過ぎない。
日本のメディアが騒ぎすぎだ」とする論説を掲載し、被害者である日本サイドを非難した。
もちろん、このツアーが中国の政府系企業からチケットを入手するというだけで、
胡散(うさん)臭さを感じて申し込まなかった人もいるに違いない。
そういう消費者は被害を免れているのだ。そういう人たちは、情報を多角的に入手し
既存メディアだけを信じない、デジタル・ディバイド(※1)の上位の人たちではないだろうか。
だが、被害者の人たちを自己責任と突き放せないのは、中国でのアジア杯での反日デモや、
瀋陽の日本総領事館での事件など、中国の負の情報に対して及び腰とも言える日本メディア
にも責任があるように思う。一部既成メディアの偏向した中国情報と、インターネットで得られる
情報の格差はもっと論じられるべきである。
MASはW杯ツアーの経験もあり、フランス大会でもチケットを用意できたという実績がある。
だが、フランス大会の混乱からFIFAが日韓大会から旅行会社へのチケット発売を止めたため、
スポーツマフィアや闇社会がつけ込む隙(すき)がかえって広がったのだ。
実は日韓大会の決勝戦でMASは韓国が製造した贋(ニセ)チケットを掴(つか)まされた“前科”
があるのに、当時、韓国製造の贋チケットの話題がどれだけ報道されただろうか?
日韓共催の美名の下に、多くの負の韓国情報が隠蔽されたと指摘する声は少なくないが、
そのツケが4年後に出た側面もあるのではないだろうか。
>>2以降に続く
ソース:ニッカンスポーツ
http://germany2006.nikkansports.com/column/nishimura/nishimura20060609.html