http://www.nikkei.co.jp/neteye5/tamura/index.html (画像あり)
★北朝鮮を読み解くキーワード「首領国家」 〔7/21〕
■日本政府は国連安全保障理事会による北朝鮮非難決議に続き、安倍晋三官房長官を
中心にブッシュ政権から提供を受けて制裁対象リストを調べ、金融制裁に踏み切る検討を
進めているが、日米が突出して制裁を強化していったい何を達成しようとするのか、見えて
こない。■まず、北朝鮮とはどんな性格の国家だろうか。その理解なくして戦略なぞ立てよう
がない。脱北した元北朝鮮の金正日側近などの証言や韓国の専門家の見解を総合すると、
以下のようになる。
★中央政府・軍・党が経済の三本柱■北朝鮮とは近代世界史でも類をみない「首領国家」
である。時折、ニュースで引用される北朝鮮国営テレビをみればよい。聞き慣れると滑稽と
も感じなくなったが、北のアナウンサーは「首領様」と連呼して金正日の「偉業」を讃える。朝
鮮労働党総書記・国防委員長である首領金正日と特権階層が父親の金日成の敷いた路線
を継承、強化し、軍需と民生の経済を私物化して銀行・商社・企業の複合体による「首領経
済」体制を築き上げた。首領経済は実に北朝鮮の国内総生産の50-70%を占めるという。
■北朝鮮の経済は中央政府(内閣)が主導する第一経済、軍事・軍需の第二経済、さらに
朝鮮労働党に直属する党経済で構成される。この第二経済と党経済の上に君臨するのが
「首領様」金正日であり、北朝鮮経済は国家経済と首領経済の二重構造にある。党中央財
政経理部には「38号室」、「39号室」、「89号室」と符牒の付いた経済統括部門がある。金正
日直轄の銀行「大聖銀行」、商社「大聖貿易」金融機関や企業は39号室所属というふうに、
金融、工場・農場・牧場、商社が金正日の私営複合体を形成している。■これらの収益は
首領体制の宣伝工作、対南工作の秘密資金、さらに金正日を頂点とする特権階層の外国
製奢侈品の購入に充当される。特権層向け配給品は等級分けされ、最高幹部向けは「8号
品」「9号品」、金正日とその一族向け外国製は「精盛品」とか「100号品」と呼ばれ、金正日
の護衛総局直属の「アミサン代表部」が海外で買い集めては平壌に空輸する。■第二経済
と呼ばれる軍事・軍需部門は党軍需工業部第二経済委員会系と人民武力省直系に分かれ
る。いずれも銀行や商社、工場、農牧場群がぶらさがり、国家経済を構成する地方企業の
有望部門を強制的に接収してしまう。脱北者などの証言によれば、ウニ、アサリなど水産物
などの輸出は地方の業者が受け持ってきたが、最近では外貨稼ぎで目の色を変えている首
領様御用達の企業が地方の権益を取り上げている。
★幻想に過ぎない「中国型の改革開放路線で軟着陸」■そんな首領経済体制の北朝鮮が
中国に習った改革開放路線を採用して、軟着陸を図るというのは幻想である。金正日労働
党総書記・国防委員長がこの1月、発展著しい華南を視察したあと、大方の予想を裏切って、
改革開放路線に踏み出すどころか、半年後にはミサイル連射事件が示すようにますます軍
事優先、中国には耳をかさなくなってしまった。■その原因は何か。さまざまな憶測が流れ
ているが、筆者は北朝鮮が中国式の改革開放路線に転じれば、北朝鮮の金正日首領経済
体制が崩壊してしまう、との危機感があるとみる。改革開放路線は中央に集中していた経済
権限を地方に丸投げする「放権譲利」が基本である。■北京の党中央は土地の使用権を地
方にまかせ、地方の党幹部が国有銀行から資金を引き出し、開発を競う。党中央の最高幹
部である政治局中央委員会はいくつかの派閥に分かれているが、上海、広東閥が代表例
である。閥の代表が常務委員となり、自身の配下を地方の党書記ら幹部に配置し、これら
の地方幹部が身内や縁戚を使って不動産開発に励む。5年に1度の党大会では経済実権を
握る中央と地方の党幹部の人事が決まるが、前年のことしは各地方が経済成長率という
「成果」を誇示するために、ますます開発、投資に励む。胡錦濤総書記・国家主席、温家宝
首相ら政府官僚がいくら過熱にブレーキをかけようとしてもだれも耳を貸さない。■奇怪な
様相の「首領経済」は経済特権を分散させる「放権譲利」とは相いれない。つまり中国式改
革開放路線は首領経済体制の崩壊につながる。首領経済しか知らない金正日総書記の目
から見れば、中国の体制こそは持続不可能に映る。だから、中国に体制保証してもらう意
味はたいしてない。中国を相手にせず、唯一の超大国米国との直取引に躍起となる。
(続く)
>>382 (続き)
★周辺国は「崩壊時の混乱限定」で協調を■首領経済系企業が生き残りをかけるのは輸
出である。ところが一般の工業品には国際競争力がない。輸出して外貨を獲得できるのは、
偽ドル札、麻薬、偽タバコ、そしてミサイルなど武器である。首領経済の頂点に立つ金正日
はその体制を誇示するために核装備まで誇示している。ミサイルと同様、核までもが輸出商
品になると踏んでいるのだろう。■こうみると、金正日がなぜ米国のマカオの「バンコ・デルタ
・アジア」口座にある20数億ドルの口座封鎖による金融制裁に怒り、六カ国協議をボイコット
し、ミサイルの連射までして、米国との二国間交渉による金融制裁撤回に躍起になるか、理
由が判然とする。金正日はこのまま次々と金庫を凍結されてしまい、首領経済体制が崩壊
してしまうことを恐れたわけである。死活問題でそれこそ瀬戸際なのだから、中国が反対し
ようと盧武鉉政権が困惑しようと、日本で自称タカ派(水面下では北朝鮮系業者から資金提
供を受けていると噂される政治家に限って強硬発言する)が台頭しようと、とにかくブッシュ
政権に金融制裁を取り下げさせ、首領体制の保証を取り付けないことには生き延びられな
いという危機感を抱いているはずだ。■「瀬戸際外交」手段としてミサイルを発射しているの
ではなく、瀬戸際だから発射しているのであり、国連が何と言おうと発射するしか米国から譲
歩を引き出す術はないと首領金正日は考えるだけである。「外交巧者」と評するのはまさしく
北朝鮮の本質の理解の欠如による過大評価である。そんなゆとりは金正日にはない。■国
連決議が意味あるのは、とにかく中国、ロシアが同調し、韓国も同意したことである。再発射
は米国が交渉を拒否する以上は避けられない。ここで日本の政治家が過去のずさんな対
北朝鮮政策を厚化粧で隠すかのごとく、独自制裁と息巻いても、日本の政治の弱みを知り
抜いている首領様こと金正日は日本向けにミサイルをお見舞いすることくらい平気かもしれ
ない。■日本にとって重要なのは、最悪のシナリオを想定し、備えることではないか。制裁し
ようとしまいと、首領国家北朝鮮はグローバリゼーションの競争下ではもはや存続し得ない、
金正日は支援しようが叩こうが生産的な結果は生まれそうにない。周辺国にとってはその崩
壊時の混乱をいかに最小限に食い止めるか、という点で協調できる。日本にとっては、米国
ばかりではなく、北東アジアの安全保障にとっても死活的な対策を特に韓国、中国とともに
考え、共通の戦略とする用意周到さが必要ではないか。■田村 秀男 編集委員
【ミサイル発射】日本の"自称タカ派"政治家…水面下で北朝鮮系から資金提供受けていると噂の人物に限って、北朝鮮に「強硬発言」…日経記者
http://news19.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1153490734/