http://mytown.asahi.com/tottori/news.php?k_id=32000000607080001 ★北朝鮮ミサイル/若い世代「打開策を」 〔2006年07月08日〕
■「草の根の交流をはかるべきだ」「政府は毅(き)然とした対応を」。北朝鮮がミサイルを発射し
た問題をめぐり、県内でも様々な意見が出ている。「南北」の壁に心が揺らぐ在日コリアン、日本
海を仕事場とする漁師、平和を学ぶ大学生――。次代を担う若い世代に、それぞれの視界に映
る課題や打開策などを尋ねた。
○「話し合おう」■「近くに落ちたわけではないので実感がわかない」。境港市の境海上保安
部で職場体験をしていた米子高2年の西尾千絵さん(16)は話す。しかし、北朝鮮に関しては
拉致問題が注目されるようになって以降、話題に上ることがあるという。「なくなるものなら武器
はなくなってほしい。けど、北朝鮮と何とか仲良くなる方法はないか、国内で話し合ったらいい」
■鳥取大学で「平和学」を自主的に学んでいる2年後藤裕亮さん(19)は「北朝鮮はミサイルを
打ち上げざるを得なかったのかも知れない。互いにもっと話し合うべきでは」と話す。近く、平和
学で北朝鮮についての勉強会を開きたいと考えている。■米子市内で行政書士事務所を営む
後藤秀一さん(26)は「20代までの若者のうち、今回のミサイル発射についてリアルな危機感
をもっている人は極めて少数だろう」とみる。政府やマスコミに、必要な情報を過不足なく、正しく
伝えてほしいと求める。「今の実感のなさが、今以上の危機に接した時に一転して安易に武力
行使を容認する方向に暴走しないか」と懸念している。
○「交流続く」■在日本朝鮮青年同盟県本部の任国主(イム・グッ・チュ)副委員長(29)=米
子市=は「在日コリアンへの人権侵害が起こらないか」と心配する。事務所の留守番電話に2
件、いやがらせが入っていた一方で、「これからも交流を深めましょう」と日本人からの電話が何
本もあった。■ミサイル発射をきっかけに在日本朝鮮人総連合会(総連)と在日本大韓民国民
団(民団)の和解が白紙撤回されたことは、「残念だが、サッカーW杯の韓国戦で民団の青年と
一緒に応援したし、今月末もバーベキューで交流する。若者間の交流は続くと思う」。■民団県
地方本部の金容煥(キム・ヨン・ファン)さん(23)は岡山の専門学校にいた時から、総連の同年
代とは韓国ブームや在日としての悩みを気兼ねなく話せる間柄だった。だが、今回の問題に、
これまでにない深刻さを感じている。「総連の人と顔を合わせたら、この話題に触れていいのか
悩むと思う。日本と北朝鮮が歩み寄って韓国が仲介する。そんな風になればいいんだけど」とた
め息をついた。
○「水差された」■「経済制裁など厳しい姿勢で怒らせては、よりひどいことが起こりかねない」
と心配するのは、鳥取消防署の消防士沢村光吉さん(24)。ミサイルが発射された5日朝、当
番の交代式で上司から「鳥取県に落下した場合を想定するように」と、非常時にすぐ出動できる
よう促されたという。■鳥取市に住む30代の漁師は連日、沿岸部でイワガキ漁をしている。今
年は梅雨入り後も「なぎ」の状態が多く、漁に適した日が多い。加えて、ノロウイルスによる出荷
の自主規制が解けたばかり。それだけにミサイル発射は「水を差されたようだ」。■テポドン2の
発射は失敗したとの報道もあり、国の威信をかけて再び発射するのでは、と不安がぬぐえない。
だが、漁に出ないわけにもいかず、「飛んでくるなら陸にいても同じ」と海に潜っている。「北朝鮮
に対する日本政府の対応は中途半端。毅然とした態度で接した方がいい」
(続く)