【米中】ブッシュ政権の「対中ヘッジ戦略」【2006/06/01】

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3(-@∀@)つφ ★
>>2の続き
日米同盟が抑止力の中核
高まるグアムの戦略的価値
 ――米陸軍第一軍団司令部を日本に移転する狙いは。
 司令部が日本にあれば、この地域に関する判断能力を高めることができる。頭脳だけを置いて
おいて、体は紛争が発生したときに、緊急展開部隊の形で後からやって来ることになる。

 また、アジアにおける陸軍のプレゼンスを高める狙いもある。韓国を除けば、アジアの米軍兵力の大半が海軍、海兵隊、空軍だ。司令部移転は、陸軍がヘッジ戦略の中でより大きな役割を与えられていることを意味する。

――その一方で、在沖縄海兵隊の司令部機能はグアムに移されるが。

 沖縄では地元自治体が米軍駐留に反対している。海兵隊の戦闘能力を低下させることなく、兵力を削減するために、司令部をグアムに移転することを決めた。また、司令部を中国のミサイルの射程範囲外に置くという付加的な要素もある。

 国防総省は日本政府に対して、もっと多くの自衛隊を沖縄に配置することを望んでいると思う。沖縄は台湾海峡に近く、中国に対するシグナル、抑止力になるからだ。

 ――日米同盟の重要性は一層高まるか。

 そうなるだろう。日米同盟はヘッジ戦略の中核だ。

 ある意味で日本政府は増大する中国の危険性をよく認識していると思う。実際、日本政府は
米国に対応を強く求めている。中国の存在が過去最も緊密な日米同盟関係を築く要因になって
いると思う。

 ――ヘッジ戦略で講じる措置の中で、抑止力を高める上で最も重要な内容は何か。

 空母戦闘群だ。太平洋の空母は数的には五隻から六隻になるだけだが、最も重要なのは
「クルー・スワッピング(乗組員の交換)」と呼ばれる運用方法の改編だ。

 現在の体制では、空母が六隻あったとしても、乗組員の休暇スケジュールやメンテナンスのため
に、戦闘準備ができている空母は大抵二隻しかない。だが、乗組員を交換することで、展開可能な
空母の数を増やせる。国防総省はこれによって、空母の展開能力を二倍にし、アジア地域に四個
の空母戦闘群を同時展開できる体制を目指している。

 ――潜水艦戦力はどうか。

 グアムに攻撃型潜水艦のほか、戦略ミサイル潜水艦を二−四隻配備する計画だ。また、ミサイル
潜水艦を改良し、最大百五十発の巡航ミサイルを搭載できるようにする。これは非常に強力だ。

 ――航空戦力はどうか。

 B2、B1爆撃機を含む戦略爆撃機の早期展開を可能にするため、グアムのアンダーセン空軍基地
を改良する計画だ。また、今後十五年以内に新型長距離爆撃機を建造し、大量の精密誘導兵器で
ディープ・ストライク(遠距離打撃)を行えるようにする。

 ――グアムの重要性が高まりそうだ。

 そうだ。グアムは重要な戦略的基地だ。グアムは米国領であるほか、地理的にも米西海岸やハワイ
より主要な目標地点に近い。アジアとの大きな距離を補ってくれる。

 ――ゼーリック国務副長官は、中国を「責任ある利害関係者」と呼び、大国にふさわしい行動を求め
ている。だが、このアプローチはクリントン前政権時代の関与政策に似ているようにも見える。

 それは違う。国務省ではゼーリック氏がヘッジ戦略の中心人物だ。彼は私のインタビューに対し、す
べての人が中国の平和的台頭を望んでいるが、誰もそれに将来を賭けるわけにはいかないと繰り返
し強調した。つまり、ヘッジとエンゲージ(関与)の両方が必要ということだ。クリントン政権はエンゲージ
だけで、ヘッジがなかった。