【韓国】盧大統領、親米に変身も反日強硬変わらず…対米接近は”堂々たる対日外交”への心理的バランス策〜黒田勝弘[4/15]

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1ポリリーナφ ★
[潮流]盧武鉉大統領 親米に変身 中立志向…反日は変わらず ソウル=黒田勝弘

政権スタート以来、反米とみられてきた韓国の盧武鉉大統領がこのところ”親米”に
変身し、その背景に関心が集まっている。突然のように米国との自由貿易協定(FTA)
締結に積極的に乗り出しているためだが、敵対的だった保守派からは歓迎される反面、
左派からは”裏切り”と批判され、政権支持勢力に亀裂が生じている。

盧大統領の対米姿勢転換の動機について1.米韓協調による経済体質の強化
2.影響力を拡大しつつある中国への警戒3.反日と反米の同時展開は不安なため
--などが指摘されている(外交筋)。

しかし大きな背景としては、周辺大国との等距離で独自の役割を目指す、かねてからの
中立志向的な「東アジア均衡者」論ががあるとの見方がもっぱらだ。

この”変身”に対しては保守派を中心に「米韓同盟の重要性をを再確認するもの」
「現実主義への回帰」として歓迎の声が出ているが、一方で反日強硬姿勢には変化
がない。対米関係についても”利用主義的”な印象が強く、根底に中立志向があるため
「どっちつかずでは信頼回復は難しいのでは」(政界筋)とする皮肉な声も聞かれる。

米韓FTA構想は昨年秋あたりから表面化し、今や盧武鉉大統領は政権終盤の最大
目標に設定している。米国の国内法の都合で来年三月までに締結する必要があり
動きは急ピッチだ。盧政権としては「韓国経済の潜在的競争力が落ちているため、
長期的観点から外圧を利用して力を付けようとしている」(外交筋)ようだ。大統領
自身、対米映画市場解放問題を例に「自信を持って内部競争力を育てよう」(国民
とのネット対話)と語っている。

しかし農業やサービスなど各分野で打撃が予想され、すでに労組や農業団体などは
「韓国経済を米国に売り渡すもの」と強く反発している。

とくに昨年まで大統領の側近だった反米・左派の奠泰仁・前経済秘書官(四六)が
最近、「今や大統領の側近から親米を牽制する勢力がいなくなった。米韓FTAは韓国
を米国化するもので、結果的に中国包囲網になる」と語り、「これは残る任期中に何か
業績を残したい大統領の焦りだ」と盧大統領を批判し話題になっている(ネットメディア
「オーマイニュース」から)。

反米・左派に代わり(?)盧大統領の対外政策に影響を与えているといわれるのが
「コリア・再び生存の岐路に立つ」という本で、著者の裴紀燦氏(四三)は先ごろ大統領
直属の「東北アジア時代委員会秘書官」に任命されている。

大統領は公開の席でこの本を繰り返し推薦しているが、著者は韓国がこの地域で勢力
均衡者の役割を果たすためには「米国との強固な同盟と信頼関係」が必要と強調し、
朝鮮半島の将来像についても「米国主導下の中立化統一」を主張している。そして中国
を牽制できる独自性を確保するには中国を上回る技術力が必須だというのだ。

さて対日関係だが、奠泰仁・前秘書官によると当初は日韓FTA構想が先行していた
という。裴紀燦・新秘書官も歴史・領土などでの「わが国の明白な原則と両国間の指針」
を主張する一方、日本は百年前とは異なり民主化され「対外膨張主義も弱い」とし、
日本との関係を通じた中国牽制を期待している。

しかし盧武鉉大統領は今のところ、領土・靖国・教科書という”反日三点セット”の原則
強硬論に変化は見えない。「対日原則固守や首脳会談拒否などを”堂々たる対日外交”
として政権の業績にしようとしているのではないか。対米接近はその心理的バランス策
なのかもしれない。反日と反米は同時にやれないから」(外交筋)というわけだ。

ソース:産経新聞(東京版)平成18年4月15日14版3面(総合面)
Web上では見られないため、記者が確認してテキスト化しました。