◇芸術文化を通して東アジアが見える−−林曼麗(りん・まんれい)さん
1月の台湾新内閣発足で、閣僚ポストの故宮博物院院長に就任した。
「芸術文化への情熱が私の原点。どんなポストに就いてもそれは変わらない」と目を輝かせる。
初の女性院長は「改革の院長」とも呼ばれる。外国人観光客も多く訪れる故宮博物院は現在、
大規模な改装工事中だ。目指すのは器だけの改装ではなく、全面的なリニューアル。
「院内の収蔵品は歴史的な遺品ばかりだが、現代社会での新たな価値もあるはず。
時代に合った文化や経済的価値を見いだし、博物院自身を変えていく」と語る。
中国と台湾のそれぞれにある「二つの故宮」の言葉に代表される歴史的、
政治的施設の新たな位置づけを模索する。
台北市立美術館長などを経て、2年前に陳水扁総統に請われて故宮博物院の副院長に就任した。
学生時代の専攻は芸術教育。美術の世界を歩み、幸せだと感じてきた。
「その幸福感を伝えるのが私の使命。博物館や美術館は、収蔵された物ではなく、人が中心にあるべきだ」
が持論である。
故宮博物院の05年の見学客は約190万人。うち外国人客約40万人のトップを占める日本人向けサービスを
さらに充実させていく考えだ。自身も、留学で日本に約10年間滞在したことのある日本通。
留学中は毎日のように美術館や博物館に足を運んだ。
日本で学んだ経験をどう生かしていくか、今後が楽しみだ。
「芸術は、その国の文化や社会を理解するためのツール。芸術を通した対話を大切にしたい」
<文と写真・庄司哲也>
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■人物略歴
台湾南部の台南市出身。東大で博士号(教育学)取得。
台北師範学院助教授、国家文化芸術基金会理事長などを歴任した。2女の母。51歳。
毎日新聞 2006年2月19日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/hito/news/20060219ddm003070058000c.html (依頼あり)