前原代表は、民主党をどこへ導こうとしているのか。耳を疑う発言が米国発で届いた。
いわく、原油や物資を運ぶシーレーン(海上交通路)防衛のうち日本から千カイリ以遠については
「米国に頼っているが、日本も責任を負うべきだ」。
このため「憲法改正と自衛隊の活動・能力の拡大が必要になるかもしれない」。
さらにミサイル防衛や、周辺事態になるような状況で「集団的自衛権を行使できるよう
憲法改正を認める方向で検討すべきだ」と踏み込んだ。
これまでの自民党政権も踏み出さなかった、米軍などとの共同軍事行動の拡大論である。
「対米一辺倒」と批判する小泉政権をも飛び越えて、いっそう米国に寄り添う政策を示したことになる。
代表になって初の訪米で、ワシントンのシンクタンクで講演した際の発言だ。
前原氏は、自民党の国防族議員から「われわれよりタカ派」と言われることもある。
日米同盟を重視する姿勢をアピールしたいと勇み立ったのかもしれない。
「民主党の目指す国家像と外交ビジョン」と題した講演である。
聴衆はこれが民主党の路線と受け止めたに違いない。
だが実際には、前原氏の発言は党内の議論をなんら経ていない。
あまりに唐突で突出した内容に、党内には戸惑いや反発が広がっている。
ほくそ笑んでいるのは、憲法改正をにらんで「大連立」をもくろむ小泉政権の側だろう。
前原氏は最近、「代表でいることが目的ではない。安保・憲法の議論はあとさき考えずにやる」
と語ったことがある。党内の亀裂を恐れず、明快な主張でリードしていくという決意のように見える。
それにしても、まずは党内で説明し、論議する努力は必要だ。
代表になって間もなく3カ月がたつのに、前原氏が党内論議を試みた形跡はない。
これでは独断専行と言われても仕方ない。
もうひとつ、気になる発言が講演にあった。中国の軍事力は「現実的脅威」であり、
「毅然(きぜん)とした対応で中国の膨張を抑止する」などと語ったことだ。
小泉政権でさえ、無用の摩擦を避けようと、首相が「中国脅威論はとらない」と言い、
麻生外相が「中国の台頭を歓迎したい」と語るのとは大違いだ。
中国に対して弱腰と取られたくないのだろう。だが、肝心なのは威勢の良さではない。
首相の靖国神社参拝でずたずたになってしまったアジア外交を、民主党ならこうしてみせるという、
外交政策の対立軸を示すことである。
韓国に関しても、竹島や教科書問題についての盧武鉉大統領の態度を手厳しく批判したこともある。
その結果、希望した訪韓さえできない始末だ。
日米同盟は何より大事。中国には毅然と対する。
だから民主党が政権をとっても自民党と変わりませんよ、心配はいりません。
そう米国に言いたかったのだろうか。ならば、自民党政権のままでいいではないか。
朝日新聞 12月11日付 社説
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