【ハンセン病訴訟】「戦後まですべて日本が負うべきか」 国が控訴 元入所者の補償も別途検討[11/08]

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185<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん
【朝日社説】2005年11月17日(木曜日)付(2)
ハンセン病補償 内と外との隔てなく

内と外との隔てなく

 かつて日本の植民地統治下にあった韓国、台湾でハンセン病療養所に入れられた
人たちが、日本のハンセン病補償法の適用を求めた裁判で、先月、二つの正反対の
判決が出た。元患者らと国はそれぞれ控訴したが、厚生労働省はその一方で、
新たな枠組みでの包括的な救済の検討を始めた。

 包括的な救済をするのは歓迎したい。問題は海外の人たちへの補償額を
いくらにするかということだろう。

 ことは人権問題だ。韓国や台湾などの元患者たちにも、同じ人間同士として、
国内の入所者と変わらない補償をすべきである。
しかも、老いている彼らに償うためには、急がなくてはならない。

 ハンセン病補償法は、国の隔離政策を違憲とした熊本地裁判決の確定後、
01年に議員立法でつくられた。前文で「悲惨な事実を悔悟と反省の念を込めて
深刻に受け止める」とうたった。

 国会審議では、戦後の国立療養所の入所者だけでなく、私立療養所の
入所者や戦前だけの入所者も、広く補償の対象とすることが確認された。
朝鮮半島の療養所も同じように扱うべきではないか、との質問には、
当時の厚労副大臣が「状況がつまびらかでなく、検証するための委員会で
考えていく」と答弁した。

 その後、ハンセン病問題検証会議が設けられた。検証会議の報告書は、
1941年7月に厚生省が開いた国立療養所長会議に、朝鮮半島と台湾の
療養所の日本人所長も出席していたことを指摘し、両療養所は「日本国内の
国立療養所と同等に扱われていた」と認定した。

 検証結果を見れば、国内と同じ補償は当然のことである。

 韓国、台湾の原告が求めている補償額は800万円である。これは補償法が
入所期間によって4段階に区分した金額のうち最低額だ。日本の統治が続いた
45年までの責任を問うているのだ。この額を値切るわけにはいくまい。

 日本での裁判を機に、韓国、台湾でもハンセン病元患者に対する人権侵害
への反省が広がり始めた。日本が過ちを率直に認めて隔てなく償うなら、日本
への見方にも、よい影響を与えるだろう。

 救済策づくりには、補償額のほかにも課題がある。韓国や台湾だけでなく、
戦前に日本の統治下にあった太平洋の島などの療養所も対象にするかどうかだ。

 事情が同じならば、対象にすべきだが、そのための実態調査が終わるのを待つ
べきではない。実情がわかっている韓国、台湾の人たちへの補償を先行させることを
考えた方がいい。韓国、台湾の原告の平均年齢はすでに80歳を超えている。
残された時間は少ない。

 救済の方法は、厚労省の告示を改正するのが一番手っ取り早い。
それがむずかしいのならば、補償法の改正や新規立法も考えられる。

 肝心なことは、国内と同じ基準で、早く補償することだ。
それを忘れずに厚労省は作業をしてほしい。