伊藤忠商事(東京都港区)は、中国でエアコン用フロンガスや衣料用染料など工業用原材料の生産には欠かせない
硫酸の生産・販売事業に本格進出する。現地の化学メーカー二社と合弁で、浙江省に来年一月と三月、
それぞれ年産三十万トン規模の硫酸工場を相次ぎ新設する。
〜中略〜
両工場で生産した硫酸は、同じ浙江省にある伊藤忠の中国合弁会社で、硫酸を使って生産する工業用原材料、
フッ酸の製造・販売会社「浙江伊鵬化工」と「浙江藤鵬化工」の二社に供給する計画。
これまで伊藤忠は、日本と韓国から硫酸の原料となる硫黄を中国へ輸出し、上海に中国企業と合弁で
一九九五年に設立した「上海京藤化工」で硫酸を製造。生産した硫酸は中国のフッ酸メーカーなどに販売してきた。
浙江省で相次ぎ年産三十万トンの硫酸製造設備を立ち上げた後は、日本と韓国からの原料調達量を大幅に増やし、
硫酸製造能力を四倍に増強。中国のフッ酸メーカーだけでなく、自社の合弁企業にも販売活動を始め、
中国硫酸事業の収益基盤を一気に拡充する戦略だ。
また、浙江省に新設する工場のうち、金華市のプラントは硫酸を生産する過程で発生する熱を使い、
大量の蒸気を発生させ、蒸気タービンの駆動で電気を起こす自家発電設備も設置する。
中国が官民あげて力を入れている省エネの取り組みに対応し、環境問題にも配慮した近代的な
硫酸生産体制を整えるのが狙い。
◆販売競争激化へ
伊藤忠によると、中国全土の硫酸生産量は年間三千二百万−三千三百万トン(二〇〇四年実績)。
日本の硫酸生産量(年間約五百万トン)に比べ六倍強の水準で、エアコンや衣料品などの需要拡大に伴い、
年率10%前後の伸びを続けている。中国に進出する商社では、三井物産と丸紅も上海や江蘇省無錫などで
硫酸の製造を手がけており、伊藤忠の工場新設により今後は日本の商社同士の販売競争も激化しそうだ。
ソース フジサンケイビジネスアイ
http://www.business-i.jp/news/china-page/news/200510290012a.nwc