■普通の国
先月の総選挙での目覚しい勝利の余韻覚めやらぬ小泉首相が、日本の安保理常任理
事国入りの頓挫に苛立ちを感じたとしても、無理からぬことである。小泉首相は即座に、
日本の国連分担金の削減要求を再び掲げた。<略> 数字で見ると、日本政府の主張は
もっともなものだ。日本の分担金割合の19.5%は、常任理事国5ヵ国中4ヵ国の分担金
割合の合計を超えており、所得で見た日本の世界シェア14%よりも多いという不公平な
状態にある。
しかし、常任理事国進出や分担金軽減といった妥当な主張は、妥当な外交政策の代替
物となるものではない。妥当な外交政策こそ、日本を「普通の」国にしようという小泉首相
の目標を達成するのに必要とされるものなのだが。
小泉首相は先週、戦犯を他の戦没者と合祀している靖国神社に参拝した。戦後60周年
に際して日本の侵略の犠牲者らに対し型にとらわれず謝罪した小泉首相の行動は、外
交的に妥当なものだったが、これも靖国参拝によって台無しとなった。<略>靖国参拝と、
それが含意する反省欠如により、日本は敵に対して、常任理事国入り妨害への完璧な
口実を与えてしまっているのだ。
一方で、日本の常任理事国入りへの反対キャンペーンを続けている中国もまた、緊張の
高まりに対して責任を負うべきである。中国政府は、小泉首相の靖国参拝が中国人宇宙
飛行士の地球帰還に水を注したと不平を述べているが、このような主張は、小泉首相側
の悪知恵というよりむしろ中国側の民族主義者らの怒りっぽさを示すものだ。<略>
注目すべきは---毎年の靖国参拝自体は無用の挑発であるには違いないが---、小泉首
相が今回、参拝の政治的重要性を低めようという努力を見せたことである。たとえば今回
の参拝は私人の立場で行なわれ、記帳に際して「内閣総理大臣」という肩書きを記さなか
った。
このようなジェスチャーは、日本の常任理事国入りを確かなものとしたり国連分担金の軽
減をもたらしたりするものではないが、融和に向けてのある種の小さなステップではある。
こうした努力が、靖国参拝のたびごとに起こる各国の儀式的なポーズの応酬を緩和し、北
東アジアの平和安定を促進することになるかもしれない。
▽ソース:フィナンシャルタイムズ(英語)(2005/10/24 03:00 GST) <Normal nationhood>
http://news.ft.com/cms/s/08398134-442a-11da-b752-00000e2511c8.html ▽関連サイト(FT紙の本件社説に関する共同通信の記事):
<日本は近隣諸国と対話を 靖国参拝で英紙社説>
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=YNS&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2005102401001573