【マンガ嫌韓流】東浩紀:<「嫌韓流」の自己満足>…朝日新聞社「論座」10月号 ★7 [09/05]

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1犇@犇φ ★:2005/09/09(金) 02:58:08 ID:??? BE:50686324-

■「嫌韓流」の自己満足 (東 浩紀/国際大学GLOCOM教授)

 「嫌韓」という言葉をご存じだろうか。読んで字のごとく、韓国・朝鮮に対する強い嫌
悪のことである。日本のネットでは、嫌韓の空気がきわめて強い。そのなかには、「嫌
韓厨」と呼ばれる困った人々もいる。彼らは、2ちゃんねるの韓国関連のスレッドに現れ
て、韓国・北朝鮮を批判し中傷する発言を繰り返す。(略)7月、そんな嫌韓の担い手が
熱烈に支持するベストセラーが現れた。山野車輪の『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)である。(略)

『マンガ嫌韓流』を一読して印象に残ったのは、表面の熱気とは裏腹の、冷笑的な空気
である。(略)公平を期すために言えば、そこには説得力のある議論もある。しかし、それ
らの議論は、日韓関係の改善に繋がる積極的な提案に結びつくわけではない。結局残
るのは、「歴史問題にしても竹島にしても、韓国人はどうしてこう話がわからないんだ、
まあバカだからしょうがねえか」という諦め、というより冷笑だけである(最後ではとって
つけたように「日韓友好」が語られるが、いかにも嘘くさい)。

 嫌韓のここに本質が現れている。かつて社会学者の北田暁大は、ネットを舞台とした
擬似ナショナリズムの本質は、他人の価値観を「嗤」い、そのことで自らの優位性を保と
うとするロマンティシズムにあると分析した。『マンガ嫌韓流』も同じである。

 おそらく嫌韓の担い手の多くは、とりわけ嫌韓厨は、日本の将来を具体的に憂いてい
るわけではない。彼らはむしろ、韓国人の愚かさを証明し、日本人の優位を確認したい
だけなのである。『マンガ嫌韓流』がディベートの場面を数多く挿入しているのは、その
ためだ。しかもその作法は、ネットでの「ツッコミ」に近い。だから彼らは、韓国人の歴史
認識や外交姿勢を批判するだけではなく、その奇異な発言や行動を収集し、「あいつら
はこんなにバカだ、困ったもんだ」と「ネタ」にする。(略)

 それを駆動しているのは、嫌韓厨自身の自己満足である。その背後には、韓国への
歪んだコンプレックスすら透けて見える。そもそも『マンガ嫌韓流』というタイトル自体、
「韓流」ブームへのアンチとして差し出されているのだ。(略)

 しかし、外交はディベートではない。ネタでもない。だれもが経験することだと思うが、
こちらが真剣に腹を立てているときに、相手に妙に冷静に対応されたりすると、ますま
す感情が高ぶるものである。それが人間というものであって、そんなときに「冷静にな
れない相手が悪い」と言っても意味がない。私たちは、この日本列島に国家を構える
かぎり、韓国と共存していかなければならない。韓国をいくら言い負かしても、その地
理的条件は変わらない。隣人は怒っていて、私たちは引っ越せないのだ。嫌韓には、
そのリアリズムが欠けている。

▽ソース:朝日新聞社「論座」2005年10月号(9/5発売) 24〜25ページ

▽前スレ: http://news18.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1126096132/