米国防総省が近く公表する予定の「中国の軍事力の年次報告書」で、中国の急激な軍事力の
増強について、「通常脅威」の中で最も警戒すべき存在と位置づけていることが分かった。米軍
筋が明らかにした。米中枢同時テロ以降、反テロ戦に大部分の軍事力を傾注してきた米戦略だが、
軍事力増強に突き進む中国をテロの脅威と並列して警戒し始めたことがうかがえる。
年次報告書は、(1)台湾対岸の南京軍区の短距離ミサイルの配備増強(2)ロシアからの
最新鋭迎撃戦闘機などの追加導入(3)台湾海峡有事を想定した迅速な機動力を持つ部隊配置
の実施(4)攻撃型潜水艦の導入にみられる海軍力の増強(5)米軍機や巡航ミサイル、精密誘導弾
への対処を想定した演習強化−などを指摘するとみられる。
ラムズフェルド国防長官は一日、米ジャーナリストのローラ・イングラハム氏とのインタビューの中で、
「中東に焦点を当てることも必要だが、中国の軍事力に視線を向けないのは危険なのでは」と問われ、
「世界の『通常脅威』について、もっと注意してみる必要がある。中国の経済力は急速に成長し、軍事力も
増強されている」と答え、中国の軍事力増強への警戒を改めて表明した。
二〇〇一年の米中枢同時テロ以降、中国が反テロ戦争への協調姿勢を示したことから、米政府が事実上
看過してきた中国の軍事力増強について、ここにきて米政府は座視できない限界点に近づいてきたようだ。
米政府の反テロ戦は、主要な脅威としてテロ組織や武装勢力などが戦闘対象である「非対称戦」の中で
展開されており、国家間が通常兵器で正面から衝突する従来型の戦争の想定は、
米軍のトランスフォーメーション(変革・再編)でも主要な課題とはされていなかった。しかし、中国の脅威は、
冷戦構造時代終結まで主要な脅威であった「通常脅威」であり、米国がテロ脅威とともに、改めて中国という
「脅威」と並行して対処する必要性に迫られている状況が明確に浮き彫りとなってきたようだ。
ソース:Yahooニュース(産経新聞) - 6月6日2時33分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050606-00000009-san-int