【書評倶楽部】環境相・小池百合子 『フード・セキュリティー』
レスター・ブラウン著、福岡克也監訳(ワールドウォッチジャパン)
(前段略)
そんな時、環境専門家として世界的に高名なレスター・ブラウン氏の著書は
大いに参考になる。現状を丹念に踏まえながら、地球的規模で起こりつつある
大潮流を解き明かしてくれる。これまで『エコ・エコノミー』などで、産業革命以来
続いてきた大量生産、大量消費、大量廃棄の経済構造からの大転換を訴えてきた。
新著の『フード・セキュリティー』では、より現実的な食糧問題から、地球環境の
危機を説いている。
石油だけでなく、穀物の輸入大国への道を突き進む中国の存在はブラウン氏に
とっても脅威と映る。十三億の人口、地下水位の低下による水不足と砂漠化、
それに温暖化の要素が複雑に絡み合って、中国の穀物在庫はこの三十年の
最低水準にある。在庫の取り崩し後は輸入大国に突き進むのは時間の問題だろう。
これまで自給自足できた大豆にしても、二〇〇四年には日本の五百万トンを
はるかに上回る二千二百万トンを中国は輸入した。アメリカの減産と重なった結果、
大豆の世界価格は一時、二倍に急騰した。
かつて一世を風靡(ふうび)したローマクラブによる『成長の限界』も人口と
食糧問題を取り上げていたが、ブラウン氏は地球温暖化という切り口を加えて、
さらに深く、広く問題の本質に迫っている。まさに百年の計を練るには必読の書
だといえる。
(略)
http://www.sankei.co.jp/news/050604/boo005.htm