治療が極めて難しい脊髄(せきずい)損傷患者が、中絶胎児の細胞を使った再生治療を
受けるため、中国へと渡っている実態が、6日開かれた総合科学技術会議の生命倫理専
門調査会で明らかになった。
中絶胎児の細胞を治療に用いる是非については、厚生労働省の審議会で議論されてい
るが、倫理的問題が大きく、結論は1年以上先延ばしされている。安全性も効果も不透明
で、患者団体からも懸念する声も上がっている。
脊髄損傷の患者団体「日本せきずい基金」の大浜真・理事長が専門調査会で行った説明
によると、この治療法は、北京の首都医科大学の医師が開発し、これまで少なくとも日本
人2人が治療を受けた。
具体的には、中絶胎児の鼻の粘膜細胞を採取し、培養後に患者の病変部付近に注入して、
脊髄の神経細胞の再生を促すとされる。医師は過去3年間で三百数十人の中国人に実施
し、運動機能や痛覚に一定の機能回復が見られたと、報告している。
医師らが設けたホームページには、日本語による案内も紹介され、5年後には日本人専門
病院の建設も予定しているという。
大浜理事長は「何人もの患者から問い合わせが来ている。効果や安全性はよく分からない
状況だが、患者に『行くな』とも言えない。日本でも早く、中絶胎児の細胞の利用について結
論を出してほしい」と訴えている。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20040406i413.htm