270 :
199:
まさに私が「厨房」だった頃・・・・
一筋の社会的不正義も許せない、といきり立つ私に、ある人は言った。
「君は、その不正義を許さない、という。だが、君はその不正義よりももっと悲惨な不正義が有ることを、
今有りつつある事を知らない。君は、それらすべての事に、その義憤をぶちまけるのかね?」
「もちろん、不正義を看過せよというのは正しくない。しかし、君のわずかな知識や経験で知り得たもの
だけが不正義ではない。そして、その不正義がなぜ行われたかの正確な情報など、私たちにもよくわからないのだよ。
もっといえば、それは本当に『正義』ではないものなのか、断言できる人は実はいないのだ」
「売春が悪いことだと言う。だが売春しなければ死んでしまう人もいたし、今もいないとは断言出来ない。
それはお金を稼ぐ女性だけではない、そこに救いを求める人だっている。もちろん、彼女たちを
食い物にする人間だっているけど、彼らの稼いだカネはまた彼らのご飯になり、服になり、
その税金でまた学校も成り立っているし道路も出来る。一方的な処断でそれを廃するだけ、
君は『世間』を知っているのか?」
「人の痛みを我がものにするということは、確かに得難い事だ。だけど、君がそれを言う時、
君はそのことで自分をさも偉いもののように思い、人にそう思わせるために言っているのではないだろうか?。
人は悲しいことに、自分とは無関係な時ほど同情を示すものだ。だが、無関係な人の同情は時として更に悪い
結果をもたらすこともある。安っぽい正義感だけで行動することが、もっと大きな悪をもたらすというのは
君がもう少し歴史を深く知ればいくらでも見ることが出来るだろう」
「今君に出来ることは、勉強をし、人とつきあい、大人になる事だ。人の世の中は、君が思うような単純さでは
出来てないのだよ。何事もメダルの両面、100%のいいことも悪いこともないということがわかってくるだろう」
まだまだ、私にもわからないことだらけだけど。ふと。