>>372 >しかし、実際にはカタルシス理論は学説的に支持されていない
カルヴァン派統治下の中世期ジュネーブでは、あらゆる性行為や性表現について、
有形無形の強力な禁止・規制が行われたのけど、かえって性犯罪は増加した。
そうした歴史的な見地に端を発し、1968年、ジョンソン大統領は「ワイセツとポルノに関する諮問委員会」を設置して
それにポルノ解禁問題をはかった。
[我妻洋『社会心理学入門(上)』より
引用開始――
この諮問委員会は19名の委員と20人のスタッフとから成り、
2年間の時間と200万ドルの費用をかけて、
あらゆる種類のポルノの実態と、その社会に及ぼす影響を調査した。
委員会の依頼を受けたノルウェーの心理学者カチンスキー(Katchinskey)は、
ポルノが解禁になったデンマークにおいて、
のぞき見とか幼児への性的な悪ふざけのような性犯罪は年々めだって減少したのに対して
強姦やサディズム的行為はぜんぜん変化しなかったことを認めた。
つまり、ポルノ映画とかポルノ雑誌を鑑賞することは、
ある種の性行動の代償にはなっても、他の性行為の代償にはならなかったわけである。
ただし、ポルノに刺激されて性犯罪が増えたと言う事実は、まったく認められなかった。
カチンスキーはこの点をはっきりと報告書に書いた。
――引用終了。
こうした研究は、後にアメリカのニクソン政権の下で作られたポルノ規制委員会で、
正式に報告書の中に採用されるに至り、現在でも社会心理学上の基礎的な考え方として存在している。
日本でも、松文館裁判の中で、社会学者の宮台と精神科医の斉藤環が引用している。