日の丸・君が代 総合スレ Part57

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ttp://www.pref.fukui.lg.jp/doc/kikitaisaku/kokumin/kaigai1.html
福井県 安全環境部 危機対策・防災課 の「先進事例国調査報告」(平成16年10月25日(月)) より抜粋。
 *(墨括弧、大括弧は引用者が付加、註)

T スイス連邦市民防衛オフィス
3 市民保護について
(1) 経緯
 第2次世界大戦や東西冷戦,そして「ベルリンの壁」の崩壊による冷戦の終結により
 戦争の危険性がほぼなくなったこと等,ヨーロッパ政治情勢の変化により,
 スイス連邦の市民保護は変遷を重ねてきた。
  第2次世界大戦時は「受動的」航空防護("Passive" Air protection,1939年),
  冷戦に伴い,憲法に民間防衛(Civil Defence)を規定(1959年),
  民間防衛に関する連邦法の制定(1962年),
  全国民にシェルターを用意する「保護」("Protect")の概念(1971年),
  冷戦構造の崩壊により,保護と救助(Protection and Rescue)の新ガイドライン(1992年),
  市民保護(Civil Protection)に関するものに法修正(1995年),
  新安全保障政策(協力を通じた安全保障)(2000年),
  そして市民保護システム(Civil Protection system)に関する連邦法の制定(2004年)
 である。
(7) 変化の背景
 1989年の「ベルリンの壁」の崩壊により東西冷戦が終結し,ヨーロッパにおいては戦争の危険性が,
 あり得ないとまでは言えないものの,ほぼなくなるという大きな変化があった。
 これにより,スイスにおける民間防衛の課題は,戦争への対処から災害への対処へと変わった。
1722/6:2012/02/02(木) 15:22:46.39 ID:nEPWm1Rn
4 スイスにおける2004年時点での市民保護システムについて
(2) 対象となる危険
 国における危険は,その大きさ(影響範囲)により,
  @ 日常的災害(交通事故,火災等)
  A 災害(自然災害(例:地震),人災(例:原子力事故)等)
  B 緊急事態(広範囲に渡る健康被害,難民の大量流入,ITインフラの大規模ダウン等)
  C 戦争に至らない暴力(国外からの恐喝,テロリズム等)
  D 武力衝突(近隣諸国における戦争,スイス国内での武力衝突)
 が想定される。その中で,武力衝突は事前の警告期間が数年間に及ぶが,
 それ以外は事前警告期間がないか,あるいは短時間と分類できる。
 市民保護システムにおいて対象とされる危険は,上記危険のうち日常的災害及び武力衝突を除くA〜Cである。
 その理由としては,日常的災害は従来の方法で対応可能なこと,また,武力衝突はその可能性が低いことと,
 実行に移されるまでに時間的な猶予があることである。
(8) プロジェクトの進展
 これらのシステムは,1998年に「安全保障政策に関する政治的原則」として連邦政府が策定し,
 1999年「安全保障についての報告」が連邦議会になされた。その後,2000年にガイドラインの作成,
 2001年に法制化,2002年10月4日に連邦議会で可決,【2003年5月18日に国民投票において81%の賛成で可決】,
 2004年に施行された。2つの州のみ新しい連邦法により運用されており,残りの24州では未運用である。
 すべての州で運用されるまでには2〜3年かかる見込みである。

【質疑応答】
Q6 スイス政府編「民間防衛」(スイス政府編纂の災害時の対処本)について
 日本では,「民間防衛(スイス政府編)」という本が最近復刊されたが,
 この本は現在でもスイス国内で使用されているのか。また,改訂の予定は。
→A6 1980年代までの冷戦に基づいた本であり,現在では使われることは全くない。
    スイスにとっては過去のものであり改訂する予定はないが,
    【もし日本で役に立つのであれば良いことだと思う】。
1733/6:2012/02/02(木) 15:24:26.85 ID:nEPWm1Rn
U ベルン州消防本部(スイス)
1 ベルンの消防サービスの概要
(2)消防・民間防衛について
・民間防衛は400名が登録しており、非常呼集で参集する。早い人は1時間以内に参集するが、
 残りの人も24時間以内に参集が可能である。
・専任ではないが、必要な訓練を受けている。
・民間防衛の予備隊員として、さらに400名が登録されている。
・化学災害に対しても出動(スイスは化学産業が盛ん)。
・災害への対処の基本は、できるだけ低いレベル(自前)で処置すること。
・ただし、化学薬品、炭化水素が絡んでいる事故は、即助けを求めることとしており、
 必要であれば軍隊の要請も行われる。
・この場合、軍隊は地元の消防の指揮下に入る。
・国家規模の災害の際に、連邦[≒国、政府]と州[≒自治体、当事者]の考え方の違いを調整するのが難しい。
 
【調査成果(所感)】
・民間防衛の制度は伝統的にも確立し完成されたものとなっており、
 国民の中にも徴兵制度と並んで定着していると感じた。
・しかしながら、冷戦の終結から昨今に至る国際情勢の変化の中で、
 ヨーロッパにおいても戦争そのものへの危機感は非常に薄くなり、
 実際の運用面では人員に余剰が出ているようだ。
・したがって、民間防衛に対する役割も変化を余儀なくされており、
 災害への対応などにその存在意義をシフトしつつあるのが現状である。
・日本では、民間防衛としての活動が期待されている自主防災組織などは災害への対応から始まっており、
 有事に対する取り組みをいかに違和感なく融合させるかが課題であろう。
・また、有事などに対する消防の意識や災害時も含めて
 関係組織が集合した際の命令系統が地元の消防に統一される、などの点については
 日本においても早急に検討すべき課題である。
1744/6:2012/02/02(木) 15:26:36.18 ID:nEPWm1Rn
V  スウェーデン危機管理庁(SEMA)
1  スウェーデン危機管理庁(SEMA)の創設
 スウェーデンでは2002年(平成14年)7月1日、冷戦対処の【非常事態準備庁】及び【心理防衛庁】を廃止・統合し、
 危機管理庁(SEMA:Swedish Emergency Management Agency)を創設した。
 これは、冷戦の終結に伴い、軍事脅威の低下が見られると同時に、
 サイバーテロを含む各種テロ、大規模自然災害、大規模事故等が大きな脅威として
 クローズアップされてきたことがその要因である。

2  SEMAの任務と民間防衛
 社会活動は多くの分野で相互依存し複雑に関連しあっている。こうしたことから、
 平時の危機対処及び民間防衛のための計画立案及び資源配分は次の6分野の間で調整され実行される。
 ・各分野ごとの全体調整、相互作用、情報
  民間防衛は、戦時におけるものと、平時におけるものがあるが、
  平時においては軍事攻撃に対する社会の対処能力を強化する活動として行われる。
  したがって、民間防衛は組織ではなく各種組織が実施する一連の活動である。
  一方、戦時では、民間防衛と軍事防衛が一体となって対処されるもの(全体防衛)であるので、
  スウェーデン国防軍と多くの民間組織、地方公共団体、企業間の緊密な協力・調整が必要となる。

3  SEMAの概略等
【スウェ−デンの緊急事態法制】
 スウェーデンの国防は、軍事防衛を中心とし、
 これに市民防衛(人命の保護・救護)、経済防衛(必要な物資の供給の確保)、
 【心理防衛(【国民の【国防意識】の高揚】)】などを一体化した、【全体防衛】という思想が流れている。
1755/6:2012/02/02(木) 15:28:51.25 ID:nEPWm1Rn
W スウェーデン市民防衛連盟(スウェーデン)
1.市民防衛連盟の概略(アンダーソン氏)
 市民防衛連盟は個人を対象とした活動であり、参加者は一般市民が中心である。
 個人活動であるのは、事故や危機事態では、個人が最初に被害を被るからだ。
 個人が活動のエネルギー元になる。危機対象は、個人に関係づける。
 どの国民も危機に対して何かができるし、個人でかなりの部分がクリアーできる場合が多い。
2.市民防衛連盟の組織機構(グニラ氏)
 ・ 市民防衛は個人が中心となっている。安全、安心、保護、サバイバルのために市民防衛組織を整える。
 ・ このことは、ヨーロッパ諸国でもお互いに同意している。私達は、現在、安全な社会に住んでいる。
  日本では最近地震が起こった[…おそらく阪神淡路の震災]。戦争の危機はなくても、平常時の危機はある。
  それに対処できる知識があればいい。それを教えるのも市民防衛連盟の役割である。
 ・ 事故とか危機に陥っても、個人が知識をもって解決できる能力をつける。
  個人がストレスを陥ったときに自己で解決できるようにすることが業務である。
 ・ 市民防衛連盟は、1937年に設立した。第一次世界大戦の危機感から、
  【普通の市民が市民を助ける発想】から設立された。当時は戦争が危機対象だったが、
  現在は、平和時における危機に対処することとなった。しかし、スタートした年から、
  【一貫して【危機処理】が業務であった】ことには変わりはない。
1766a/6:2012/02/02(木) 15:31:49.01 ID:nEPWm1Rn
 ・  ・・・・・・前略・・・・・・  子供への教育も大きな部分を占めている。子供を教育することは大切なことである。
 ・ 子供の教育課程には3コースある。1点目は、停電や洪水になった時、どういう風にしたらクリアできるか、
  また、食べ物はどうしたらいいか。2点目は、迷子になった場合、特に自然の中で、森の中で迷子になった場合、
  待っている場合どうしたらいいか。3点目は、家庭内や近所での事故を防ぐためにはどうしたらいいかである。
 ・ 大人向けの教育課程としては、1点目は危機に備えて、2点目は自然の中に出たときに、
  3点目は家庭内の安全、4点目は傷つき破壊されやすい社会の弱点である。
 ・ 人間が成長するためには何が必要か。食料、体温、水、保護、情報や仲間である。
  自分の体への知識を確保すれば、自分で考えることができる。 ・・・・・・後略・・・・・・
 ・ スウェーデンでは、共稼ぎが普通なので、両親が不在時の対処の仕方を教え、
  例えば、近所の大人と連絡(コンタクト)をとるとか、学校と家庭の間で決め事をして置くとか、
  重要なことは、何かが起こったときにどうするかという精神的(メンタル)な部分である。
  子供は水分不足や食料不足になったときどういう行動を起こすか。血糖が下がるので、判断が鈍くなる。
  例えば、森の中で迷子になったときは、迷子になったところに立ち止まるとか、体温を下げないようにするとか、
  捜索隊が出た時に捜すのが容易になるように、自分がここにいたことを残す、ハンカチを木にかけるとか、
  迷子になったとき小さな小屋をつくるとか、体を動かすことで体温が下がらないようにすることが大事で、
  そのうちに捜索隊が来る。先生もすぐに警察に電話を入れ、決して生徒を使って捜すことをしてはいけない。
  この教育内容は、年間5万人の子供に到達することになる。
1776b/6:2012/02/02(木) 15:36:25.39 ID:nEPWm1Rn


【調査成果(所感)】
 ・ また、核の恐怖は去っても、危機に対する国民の意識レベルを低下させないため、危機管理庁では、
  市民防衛連盟に対し、子供から大人までを対象とした危機管理の統一的な教育プログラムを実施し、
  国民一人一人が【自分のことは自分で守るという「自助」】の価値信念を持っていることには感銘した。
  (日本の地域共同的な危機管理に対して、スウェーデンでは個人における危機管理が重視されているのは、
  その国土の広さにもよると思われるが…。)
 ・ またこうした教育プログラムの実施は、【国や自治体が、危機管理に対する説明責任を明確にしている】
  ことの現れであると感じた。



お詫び:
墨括弧の一部(各表題のもの…【質疑応答】【調査成果(所感)】【スウェ−デンの緊急事態法制】)は、
本文でも墨括弧だったもの。 弁別を失念した不手際を謝罪する。