平和と自由は、【一度それが確保されたからといって永遠に続くものではない】。
スイスは、何ら帝国主義的な野心を持たず、領土の征服などを夢見るものでもない。
しかし、わが国は、その独立を維持し、自ら作った制度を守り続けることを望む。
そのために力を尽くすことが、わが国当局と国民自身の義務である。
軍事的防衛の準備には絶えざる努力を要するが、
【精神的防衛】にも、これに劣らぬ力を注ぐ必要がある。
国民各自が、戦争のショックを被る覚悟をしておかねばならない。
その心の用意なくして【不意打ち】を受けると、悲劇的な破局を迎えることになってしまう。
『わが国では決して戦争はない』と断定するのは軽率であり、
結果的には大変な災難をもたらしかねないことになってしまう。
将来我々に何が起こるかは、誰にもわからない。今、世界は、平和と戦争の間に生きている。
あちこちで新しい戦火が燃え上がっており、【地球を二分するイデオロギーの潮流】は、
【局地戦を全面戦争に】変えてしまう可能性がある。
【いかなる根拠のもとに、我々には戦争の危険などないと主張できるのだろうか】。
【わが国の周辺で、どの国が武装を放棄したか】。どこでも軍事費は増大している。
世界には、恐るべき核戦争の脅威が圧し掛かっている。
毎朝、新聞が我々に思い出させてくれる真実は、残念ながら以上のようなものである。
全く、我々に将来何が起こるかは、誰にもわからないのだ。
【【我々の平和な生活をその手中に握っている強大国】が、理性的であり賢明であることを心から希望する】。
【しかし、希望を確実な事実であると見ることは、【常軌を逸した錯誤】であろう】。
そこで、最悪の事態に備える覚悟をしておく必要がある。
たとえ、遠くで行われる戦争でも、わが国の経済に重大な打撃を与える可能性がある。
地球の端から端まで、経済的な利害は――したがって政治的な利害も――きわめて複雑に
入りまじっているので、【世界中で起こったことは、全てわが国にも関係がある】。
わが国の貿易収支を一目見れば、わが国がどれだけ世界経済に依存しているかがよくわかる。
我々の食料品の相当部分は外国から輸入されている。燃料もそうであるが、特に動力用の燃料は、
その全部が外国から入ってくる。そして、他方、わが国の輸出が止まれば、
スイスの労働者はその大部分が失業の羽目に陥る。このことを、我々はよく考えてみる必要がある。
さらに、我々は、一国の【占領というものには、【いろいろの形態】がある】ことを考えねばならない。
強大国は、核破壊兵器を保有しており、弱小国に対しては、これを用いずに
戦わずして手に入れようと、圧力をかけてくることも可能である。
核戦争によって砂漠のように荒廃した国を手に入れるよりも、
物資が十分供給されている国に手をつける方が得策ではないだろうか。
そこで、【戦争は、【心理戦】の形態をとるようになり】、
【【誘惑】から【脅迫】に至る、あらゆる種類の圧力】を並べ立てて、
【最終的には、【【国民の抵抗意志を】崩して】】しまおうとする。
現代においては、宣伝の技術や手段は極めて発達しているので、
【【あらゆる形での】他国に対する【浸透】】が可能である。
我々の記憶に残っているところでも幾つかの例が挙げられるが、
或る国の如きは、【防衛の態度を何ら示さないうちに】敗北し、占領されてしまった。
なぜかと言えば、それは、【その国民の【魂】が】、
利害関係のある【【「友人」と称する者】の演説】に心地よく酔わされて、少しずつ【眠り込んで】しまったためである。
(くどいようだが、初版は1969年、遠い他国の・・・・)
戦争の悲惨な様相は一般に知られている。しかし、まだ我々の知らない新しい様相も
つくりだされるかもしれない。 戦争について考えてみよう。
―――空を横切る爆撃機、落下して市街を破壊するロケット弾、煙の出ている廃墟を押し潰す装甲車・・・・・・。
戦争ではもっと酷いことが行われる可能性もある。【直接の攻撃を受けなくとも】、
或る国は放射能のチリを浴びせられるかもしれない。また、その泉、その水が汚染されて、
疫病が住民全部に被害を与えることもあり得る。これらについても、よく考えておく必要がある。
それも、今日から・・・・・・。
第二次大戦の経験によって、わが【領空の一部が】、我々の【制空権から離れてしまうこと】があったことが示された。
意図的ではなかったにしても、外国の航空機が、わが領土に被害を与えたのだ。
【わが国が、いかに一生懸命に中立を守っていても】、
【中立だからといって、あらゆる危険から我々が保護されているわけではない】。
将来の戦争では、過去の爆撃機よりも恐ろしいミサイルが使われるだろう。
わが国が紛争に【直接巻き込まれることがないとしても】、
わが国に【降りかかるかもしれない火の粉】――危害に対しては、
今から十分の備えをしておくべきである。
》この辺にしとくか・・。以下も、興味深い記述が続くが、
さすがにスイス限定の内容が濃くなる一方なのでこの辺で・・・《